企業規模にかかわらず製品のハラル認証には時間と労力を必要とする。
多くの国でビジネスを行う国際企業(MNC)であれば、輸出国で各ハラル認証を必要とするため尚更である。
この欠点の1つは、異なる国に輸出する度に異なる認証を申請することで、以前申請した認証は無効であることだ。

ローカルごとのハラル基準

国際的なハラル基準を制定することが可能かどうかという問題がある。
業界の人間の大半はこの問題に否定的である。
EU標準団体CENがEUで行ったように、様々な認証団体や政府がローカル基準を制定したが、非ムスリムによる決定を嫌うムスリム達によって制止された。

トルコに本社を置くSMIIC

2010年トルコはハラル認証において、OIC(Organization of Islamic Cooperation)の枠組みの中で重要な一歩を踏み出した。OICがハラル食品基準とハラル認証基準を認め、トルコに本社を置くSMIIC(Standards and Metrology Institute for Islamic Countries:イスラム諸国向け標準・検査機関)の設立へと進んだ。

ムスリム国の57メンバーを有していたOICのもと、SMIICは現在オブザーバー3会員を含む、様々な分野のハラル基準団体38会員を抱えるため、一見良いスタートを切ったように見える。

しかし、事はそう簡単ではない。会員数は急成長を抱え可能性を感じるものの、それらの国の多くはまだハラル関連制定の発行が行われていない。

2017年にはトルコのハラル商品・認証における中心的ポジションを強める為、トルコ・ハラル認証機関HAK(Halal Accreditation Authority)が設立され、国に対してハラル認証における規則策定権を持たせようとした。

SMIICがOICおよび非ムスリム諸国と協力して策定したルールを遵守し、幅広い範囲をカバーし技術背景がしっかりしたハラル認証を設置することを目標とする。

国際市場におけるハラル基準の変化

最大の変化は、 Sheikh Mohammed bin Maktoum氏が2014年ドバイをイスラム経済中心的存在にするため企画した第一回GIES(Global Islamic Economy Summit)の開催決定時に起こった。
まもなくしてESMA(Emirates Authority for Standards & Metrology)はUAEに輸出する全ての国にESMAハラル準拠を強制するようになり、認証監査が必要となった。
この条件は、国際的なハラル認証機関:2016年ドバイで開始したIHAFの必要性を明らかにした。

GCC(Gulf Cooperation Organisation:中東ガルフ湾協力機構)はESMA基準のコピーであるGSOハラル基準を用いて、GACというGCC認証機構がESMA基準に対抗する形で認証を行っている。

世界的に認知された政府関連認証機関JAKIMの存在

長年にわたり世界で広く認知された認証団体であるマレーシアの政府関連認証機関JAKIMは、公式リストを作成した。

以前は傘下のハラル認証者が自社ウェブサイトに箔をつけるため程度のものであったが、2018年マレーシアはIHAB(International Halal Authority Board:国際ハラル認証議会)を開始し、ゆっくりと第三者の監査なしの認証は終わりに向かっている。
各業界はいずれも今、ハラルの認証に従う必要がある。

ASEAN公式立上げ後、インドネシアは2018年10月のAMAF(ASEAN Ministers of Agriculture and Forestry:ASEAN農林大臣)会議の中で「2019年ASEANハラル食品認証ガイドライン」について呼びかけた。制定には時間を要するが、ASEAN各国での取引に非常に有益となるだろう。

ハラル認証ラベル無し商品に対する議論

98%が輸出向けであるスイスMondelezのチョコレートTobleroneのハラル認証を発見したEU極右派が先導する議論がある。
これはハラル認証済製品であるもののパッケージにハラルマークが表示されていない問題と無縁ではない。
他にも多くがハラル認証済製品、または原材料レベルで認証されているが、認知されていない。

ムスリムにとってのハラルマークの安心感

ハラル認証を持つメーカーはイスラムの日用品に対する要求に準拠し、ムスリム顧客を安心させる事ができる。

Tobleroneのケースのように製品のレシピとは関係なく、機械清浄用アルコールの成分を変更するだけといった場合もある。

例としては、スイスBasler Ricola AG社は自社のキャンディがハラル認証済であると最近発表した。

Emmi AG社は2000年に乳製品の幾つかの認証を取得している。Nestlé(ネスレ)、Wander、Maggi 、Barry Callebautもハラル認証を取得している。

Nestlé(ネスレ)はマレーシアに自社のHalal Competence Center(ハラル適合センター)を設立した最初の会社で、様々な商品の開発と研究が行われている。しかしマレーシア市場向けのNestlé(ネスレ)製品には洞察力のある顧客向けにハラルマークが貼られる。

世界市場に向けたハラル認証の必要性(インドネシア)

多くの企業にとって認証を選定するのは、急成長する発展途上市場へアクセスするためである。これらの国の多くは若くて消費力を持つ、巨大なムスリム人口を抱える。

Swiss Arab Networkの Mounir Khouzami氏は、非営利団体のネットワークがスイスとアラブ諸国の文化的・経済的関係を促進すると述べ、最大のムスリム人口を誇るインドネシアを例に挙げた。2018年12月にスイスはインドネシアと自由貿易協定を締結した。

「国連の調査によると2050年インドネシアは約3.5億の人口となり巨大な市場となる」とMounir Khouzami氏はコメントした。

そのインドネシアは、ハラル認証の必要性を強化した国の1つ。

2019年からは、インドネシアに輸入される全ての製品にインドネシア当局発行のハラルマークを貼る事が義務付けられる法律が施行される。

企業にとってこれはチャレンジとなる。ある国の認証はその他の国へ販売するためには不十分である(使えない)。

すでに別の国で認証をとっていても、ある国は自国のハラルマークを強要し、2重のコストが必要となる。ASEAN諸国同士のより便利な貿易のための救済策を探さざるを得なくなるだろう。

認証ごとに専門家は毎回全精査

例えばRicola AG. Ricola sweets社はHFCE(Halal Food Council of Europe:欧州ハラル食品協議会)に準拠しているが、インドネシアで販売する為には、MUI(Majelis Ulama Indonesia:インドネシアのハラル認証団体)から供給されるハラルマークの申請が必要となる。

企業にとって認証の取得は時間と労力を費やすプロセスである。それぞれの認証で食品技術の知識を持ち、イスラム法のトレーニングを修了した人間によって外部専門家による商品原産地、生産地、生産工程などの全精査が行われる。

この余計な労力を防ぐ為、多くの企業がどこでも有効な統一認証を求めている。
Nestléは毎回新しい味を各商品で出す度に、毎年どれだけの個別の認証が必要となるのか見当もつかないが、「我々は相互認証によりある認証が異なる国でも認められるよう望む」とコメントしている。
この実現のためNestléは多くの政府機関とコンタクトを続けている。

Ricolaもこの認証の統一化について喜ぶだろう。
「世界中で有効な認証は役に立つので支持する」とコメントしている。
肉製品以外では、どのように屠殺(とさつ)・屠畜されたのかに関しての議論対象外あるが、(一部の)アルコール・ゼラチン使用に関する使用不可の問題がある。ただし、これらのアルコール・ゼラチンには代替品が存在する。

貿易ポリシーの一部

スイスHCS社(Halal Certification Services)の創始者Farhan Tufai氏は、1つの認証だけですぐに全世界すべての国に輸出できるようになる事は期待していない。

その理由の1つは、国によって宗教的ルールにどれだけ厳重に従うかの違いがあるためだと言う。

また、ハラル認証がその国の貿易ポリシーの一部であるという、経済的な理由も存在する。Farhan Tufai氏によると、特に大きな国であればあるほど、自分の市場を保護したいために、輸入に対する規制を行いハードルを築くという。

原文:https://halalfocus.net/opinion-halal-certification-for-global-markets/