前回の記事では、ハラール認証取得商品の販路開拓方法について、筆者である有馬芳香堂が実際に取り組んだ以下5項目の①販路開拓(ハラール認証取得商品の販路開拓方法)についてご紹介させていただきました。

今回は、ハラール認証商品で輸出に成功したメーカーの事例と当社の商品展開を踏まえて、ハラール認証取得商品の海外輸出で大事な「商品設計」と「パッケージデザイン」に関したお話をしたいと思います。

  • 販路開拓 ←前回の記事
  • ②商品設計 ←今回
  • ③パッケージデザイン ←今回
  • ④現地での販促
  • ⑤広報戦略

ハラール認証取得後の輸出商社や海外バイヤーからの反応

「ハラール認証を取得したものの、輸出商社や海外バイヤーからいい反応がない。」
あなたはそのような経験はございませんか?

私の経験で言うと、ハラール認証を取得した日本企業からマレーシアでの販売打診を受けて、現地での商談会で提案したが、「結果良い評価を得られなかった」という商品は少なくないです。

そのような場合、多くのバイヤーからもらう回答として以下3つのような内容が大半ではないでしょうか?

  1. この味に需要があるかわからない。
  2. ぱっと見て何かわからない。
  3. ローカル製品があるので価格差から魅力を感じない。

日本食コーナーの棚はローカル商社がコントロールしている場合が多く、そのためローカル商社が扱いたい魅力的な商品(差別化、利益、回転)である必要があります。日系大手メーカー商品(ハラール認証関係なしに)を中心にした品揃えは今後も変わらないので、ハラール認証商品は彼らと常に差別化が求められるものである必要があります。また、棚の場所取り合戦ですから、あなたの商品が採用されると他の商品がカットになりますから、常に残り続ける魅了的な商品でなければなりません。

以上、少し厳しめの話を書きましたが、日本ハラール商品にはチャンスとポテンシャルしかありません。当社にもソーシャルメディアを通じて多くの小売店やEコマース事業者からアプローチがあります。彼らが求める商品であれば、販売につながるチャンスは格段に上がります。

ハラール認証取得商品の海外輸出で大事な「商品設計」と「パッケージデザイン」

今回は、ハラール認証商品で輸出に成功したメーカーの事例と当社の商品展開を踏まえて、ハラール認証取得商品の海外輸出で大事な「商品設計」と「パッケージデザイン」に関したお話をしたいと思います。

プロダクトアウトとマーケットインの発想

商品設計する上で大きく2つのアプローチがあります。

  1. プロダクトアウト
  2. マーケットイン

の2つで、簡単に説明すると前者は「自分が作りたいものを作る」、後者は「マーケットが求めているものを作る」と言えます。上述の海外バイヤーの共通する多くの回答は①が圧倒的に多いのではないでしょうか?

考えられる理由としては、

  • 自社商品の売れ筋だから売れるだろう
  • これが日本の味だから
  • 地元の名産だから

こんな所ではないでしょうか?

現地の棚・食習慣や文化を見ずに商品設計すると、それはただの押し売りでしかありません。

甘さ、辛さ、酸味の基準も全て日本とは異なります。華人は素材系の味を好みますが、マレー系は甘いものを好みます。このような人種による味の志向も異なるのがマレーシアの実情です。

店頭販売で収集したフィードバック事例

私自身小売店での店頭販売を通じて、お客様から大変多くのフィードバックを得ることができました。それは自社商品だけでなく、日本食品に関する事も含みます。下記が、店頭販売で収集したお客様からのフィードバック事例です。

  • 「○○は顆粒タイプがあれば欲しい。チャーハンを作るときに便利。」
  • 「煎餅で一番買うのは○○味」
  • 「ラーメンは○○味がマレーシアで一番人気なので、ハラール対応の商品が欲しい」
  • 「こんなに内容量は要らない。少量にして売価を下げて欲しい」

ローカルフードの試食、ローカル商材との比較、日本食コーナーでの競合商品調査を兼ねて、是非一度現地視察される事をお勧めします。プロダクトアウトを否定する訳ではありませんが、マーケットインの発想を常に念頭においた商品設計が海外輸出での成功のポイントになるのは間違いありません。

成功事例と具体的な商品展開

次に具体的な商品設計について、ハラール認証商品で輸出に成功したメーカーの事例と当社の商品展開を踏まえてご紹介したいと思います。

「商品設計する上でターゲットは誰になるのか?」ということは非常に大事です。

前回のブログで紹介した通り、マレーシアは大きく3つの人種(マレー系、華人系、インド系)にその他(海外駐在員など)で構成されています。そして日本食の主要消費者は、華人系と日本人がベースとなります。ですので、ローカル商社は彼らへの販売を最優先します。残念ながら日本食コーナーにはハラール商品がない(と思われている)と言う認識が強いので、マレー系の方々への販売は小売店では弱いのが現実です。当社の場合、ベースとなる華人系と日系マーケットへのアプローチを優先した品揃えで展開し進めています。以下に具体的な商品展開方法を掲載いたします。

上述の通り、数多くの店頭販売でお客様から味に関する評価やアドバイスを頂いています。
日本食の味で人気なのは、「醤油、七味、柚子、唐辛子、わさび、豚骨(華人向けラーメン)、抹茶」です。商品設計をする上で是非参考にして頂ければ幸いです。

価格

日本食コーナーに陳列されている商品の価格を確認されるとわかりますが、かなり競争力のある売価で展開されており、日本の税込み価格×1.2-1.3倍というイメージです。また商品構成の売価帯も198円、298円、398円までの商品で構成されており、それ以上の価格帯商材は決して多くありません。当社商品の売れ筋商材は、日本販売価格198円と298円ですので、今後もこの価格帯商材の商品展開を検討しています。

内容量

買いやすい価格帯での展開はマレーシアでも重要ですが、買いやすい内容量での商品設計も重要になります。ある調味料メーカーは、内容量が多すぎるため売価が高すぎたことから、内容量を減らし買いやすい価格帯に変更しました。絶対売価が高すぎると輸入する上でローカル商社がリスクを取りたがらないので、内容量調整による価格設計も有効です。

消費期限

商品設計で大変重要なパートです。結論から言うと、最低でも1年は欲しい所です。国内納品ではなく国外輸出であることから物流に1−2ヶ月かかります。輸入者と販売者のリスク管理で彼らも賞味期限が長いものを優先して採用しているのが現実です。もちろん美味しさと安全性があっての話というのは当然ですが、賞味期限ではなく「消費期限」としての設定が輸出には好ましいと私は考えています。設定に関しては、社内で明確なルール決めが重要なのは言うまでもありません。輸出に成功しているハラール認証取得乾麺メーカーは、食品検査を経て消費期限を1年半〜2年で設定したことで、海外販路が大幅に増えました。

デザイン

海外輸出なのでパッケージは全て英語や現地語が良いと思いがちですが、実はそうでもありません。当社も以前は輸出向けに英語パッケージをデザインしましたが、結局は国内向け商品を輸出しています。その理由は、「日本で販売しているものを買いたい(安心する、ワクワクする等)」です。ですが、相手に商品が何か伝わらないパッケージでは問題です。

当社が取り組んでいるのは、

  1. 英語の商品名を併記
  2. Product of Japanを印字
  3. ハラールロゴ

上記の3をつを裏面隅に印刷を全ての商品で採用しています。消費期限の兼ね合いで、中身を見せられる商品には窓をつけ、アルミ包材で完全遮光する商品にはイメージ写真を全面に掲載するなどぱっと見て分かりやすいデザインを採用しています。またパッケージデザインの横展開も重要視しており、棚で場所を確保しやすい施策も打っています。

テストマーケティング

さて現地での視察を通じて、勝負できる商品が開発できました。

しかし、いきなり定番で採用というのはかなりハードルが高いのも事実でローカル商社もまずは様子を見たい所というのが現実です。

当社の場合は現地に入り込んで、定期的な試食販売を介して定番採用を獲得しましたが、日本から頻繁に現地入りするのは現実的ではありません。

そこでお勧めなのは、テスト販売です。マレーシア(特にクアラルンプール)で展開する日本食品を扱う小売店でのテスト販売を日本食コーナーで場所を確保しているローカル商社と組んで展開するプランです。

定期的な催事を得て実績が出れば定番として採用される可能性がぐっと上がります。メーカーとしては、テスト販売を通じで「定番採用」されることがまずはスタートとなります。

しかしながら、日本のように商品を小売りに販売したらそれで終わりという訳にはいかないのが海外ビジネスですので、定期的な催事(試食販売)は長期的な商売のためには必須です。当社では、マレーシアでのテスト販売事業と、定期的な試食販売代行を承っております。詳細はHBOまでお問い合わせください。

まとめ

海外輸出

今回のブログでは、マレーシアに輸出する際に取り組んだ5つの事の一つである、②商品設計とパッケージデザイン、について紹介致しました。輸出するためには、ゼロから輸出向け商品を別規格で作る必要があると思われる方も多いですが、そんな事はありません。テスト販売を通じてまずはフィードバックを得ることも有効ですし、既存商品で海外でウケそうな商品のパッケージのデザインに英語併記することからスタートするのも良いと思います。間違いないのは、私達の当然≠海外の当然ですので、まずは現地に足を伸ばして市場を見られることをお勧めします。

※前回の記事も是非ご覧ください。


著者プロフィール

有馬 幹人 氏
神戸の豆菓子メーカー(株)有馬芳香堂の専務取締役 、マレーシア法人Arima Food Lab Sdn.Bhd.のManaging Director。 専門商社での勤務を経て大学院で修士課程を修了後、家業である(株)有馬芳香堂に入社。業界でいち早くEコマースでの集客に注力し、1年でPV数60倍・売上5倍を達成。2016年から海外輸出を開始し、現在では東南アジア諸国への輸出を中心に業務拡大中。その中でハラール認証の重要性を痛感し、2019年11月に認証取得。翌月にマレーシア・クアラルンプールに赴任。2020年10月、現地主力商社との契約を締結させ、同年12月からマレーシアの現地高級小売店及びEコマースにて販売開始。「日本ハラール商品とマレーシアを繋ぐ架け橋になることで、日本の美味しさを多くの方に届けたい。」と言う熱い想いを持つようになり、2021年6月よりSALAM117社と現地小売店、商社協力の元、日本ハラール商品・テストマーケティング事業をスタートさせる。