「よし、ハラール認証を取得したぞ!これから輸出にチャレンジだ! でも注文も問い合わせもない。困ったな …….。」
とあなたも悩んでいませんか?
実は多くの企業からこのような悩みを聞く機会があります。ハラール認証に関して質問を受ける中で、
- 輸出
- 費用
の2点に関する相談が多いです。ハラール認証取得はあなたが「何かにチャレンジするための手段」であって目的ではありません。しかしながら、多くの企業はこの「落とし穴」に陥ります。「認証取得したら協会がお客様を紹介してくれる。」「多方面から連絡が入り受注できる。」と思いがちですが、そんな話は残念ながらありません。通常の商売と同様に営業、販促、広報活動が大事です。この記事を執筆している私の家業である有馬芳香堂は、イスラム教の国であるマレーシアに進出をしましたが、販売する際に「5つ」の事に取り組みました。
それは、
①販路開拓
②商品設計
③パッケージデザイン
④現地での販促
⑤広報戦略
の5点です。
今回の記事では①販路開拓について説明します。
販路開拓に取り組む上で大事なこと
輸出を目指して販路開拓に取り組む中で、
- 輸出の大枠を理解する
- 市場を決める
- 市場調査する
- 競合調査する
- 商流を調査する
以上の5点は大事なポイントとなります。ハラール認証自体は武器にもなりますが、それ以上に大事なのは輸出する上での準備です。なので、上記の1〜5に関しては、ハラール認証の有無に関わらず輸出する上での大事な取り組みとして順番に解説します。
私自身、ハラール認証を取得する前から輸出事業に注力していましたが、なかなか思うように結果が出ませんでした。国内外で開催された展示会には出展者として輸出パートナーを探すため参加したこともあります。しかしながら、「輸出する側としての準備」も不足していたため、なかなか輸出までたどり着くことができず、マレーシアでの販売を目指すと決めてから商品が現地の棚に並ぶまでに「1年半」もかかってしまいました。
今思えば事前に準備がもっと出来たと思いますが、当時の私は輸出に関する全体像が見えていなかったと思います。
「輸入する側の立場」で考えてみるとわかることなのですが、いかに自分がメーカー視点で動いていたかということに気が付かされました。
①輸出の大枠を理解する
輸出の大枠は主に下記の2パターンに分けられます。
- メーカー→日本商社→現地商社→現地小売店
- メーカー→現地商社→現地小売店
大半の企業は、国内商社を介したルートで輸出を行います。稀にメーカーが現地商社に直接販売を行うケースもありますが、コンテナ単位での出荷やドルでの決済など輸出のスタートとしてはかなりハードルが高いので経験者向けと言えるでしょう。
まずは、国内商社を介した輸出に取り組むことをおすすめします。しかしながら、闇雲に商社に営業しても上手くいきません。大事なのは、目指したい市場を得意する商社との取引です。
②市場を決める
「とりあえず輸出したいのです。 販売お願いします。」では国内商社も困ってしまいます。別の記事で解説する商品設計やパッケージデザインの件を含めて、「どの市場に挑戦したいのか。」「販売するべき理由は何か?」など明確にする必要があります。現地商社に対しても販売するべき説明 や動機、説得が必要 なのです。
そのために、まずは「市場の選択」をおすすめします。輸入 規制(添加物、賞味期限など )が各国で設 定されているので、その点に注意することも大事です。「ハラール認証を取得したのでイスラム市場への輸出にチャレンジしたい。」と考えたあなたならどの市場にチャレンジしてみたいでしょうか?
東南 アジアのハラール市場には、マレーシアを始め、シンガポール、ブルネイ、そしてインドネシアという市場があります。マレーシア、シンガポールは条件 として 比較 的輸出が容易 ではありますが、ブルネイやインドネ シアに関しては現地保健省 に商品の登録 が必要 など手 間と時 間がかかるという背景もあるので注意です。※私はインドネシアへの輸出に2年かかりました。
③市場を調査する

市場の調査に関しては、主に「人口」と「現地小売店」の2点の調査が重要です。仮にマレーシアでの販売を目指す事にしたとしましょう。マレーシアの人口 はご存知 でしょうか?
2021年現 在、マレーシアには約3200万人 のマレーシア人が住んでいます。外国人労働者や駐在員、その他学生など含めると3500万人はいるのではないでしょうか。
また人種構成としては、
- マレー系65%
- 華人系23%
- イン ド系7%
その他5%と言われています。
経済の中心街であるクアラルンプール及びセランゴール州の人口はそれぞれ、180万人と655万人です。
日本からの輸出は主にこの2つの地域がターゲットであることからも、835万人の市場が顧客ターゲットになることを把握してください。クアラルンプール及びセランゴール州には日本食を販売するローカルと日系の小売店が多く、彼らはミドル〜アッパー層のセグメントを対象としています。
現地では日本食が人気ということもあり、日本食コーナーは棚数が多い店舗では20程ある店も。しかしながら、日本ハラール商品はまだまだ少ないのが現状です。2021年にマレーシアに進出した某有名日系小売店は、日本ハラール商品の販売を強化するとして商品の発掘 にも注力されています。是非一度現地で自分の目と足で売り場を確認してください。
④競合を調査する
一般的に、海外の小売店では日本食は「Japanese food corner」に集約されて販売されおり、その中でカテゴリ別(と言っても日本のように細分化されていません)に緩く陳列されています。日本食は人気ではありますが、あくまでマイノリティなので各カテゴリで必要最低限のSKU数で展開されています。マレーシアで販売を目指すと決めた私は、まず現地を訪問してこのような状況を確認することから私はスタートしました。
前述の通り、日本食は人気なので恐らくあなたが販売したい商品の競合品は既に販売されている可能性が高いと思います。当社の競合品も既に販売していました。しかし、輸出に向けてこれから商品設計やハラール認証を取得するなどで商品を磨けば輸出できるチャンスは格段に上がります。日本に 帰国後、競合商品と競争しない商品の設計やハラール認証取得による差別化 を深堀りすることに注力しました。
⑤商流を調査する
現地小売店で調査をしたのは競合商品の規格や値段だけではなく、「誰が輸入者なのか」と言う点です。実はこの点が輸出をする上で非常に大事です。実は、小売店の棚の管理を現地商社が請け負っている事が多く、それは即ち「現地商社が売りたいと思わなければ輸出のテーブルにも乗らない」という事でもあります。なので、各商品カテゴリの主な輸入者は誰なのか?ということを徹底 的に調 べました。あるカテゴリーでは現地商社のAが8割以上のSKUを管理しているということもあります。そのため、闇雲 に日本で商社に声をかけるのではなく、現地で販売力がある商社とパイプが強い日本の商社を探すことが大事になります。
まずは、
現地の小売店を調査する→商品を調べる→輸入者を調べる。
この一連の流れは時間もコストもかかりますが、結果的に一番の近道になったと言うのが私の経験です。
まとめ
今回のブログでは、マレーシアに輸出する際に取り組んだ5つの事の一つである、①販路開拓、について紹介致しました。輸出だからこそ国内取引の先の商流は全くわからないという方が多いと思います。時間とコストはかかりますが、是非一度は現地小売店の棚をチェックしてみてください。意外な発見が多いと思います。
著者プロフィール
著者プロフィール

有馬 幹人 氏
神戸の豆菓子メーカー(株)有馬芳香堂の専務取締役 、マレーシア法人Arima Food Lab Sdn.Bhd.のManaging Director。 専門商社での勤務を経て大学院で修士課程を修了後、家業である(株)有馬芳香堂に入社。業界でいち早くEコマースでの集客に注力し、1年でPV数60倍・売上5倍を達成。2016年から海外輸出を開始し、現在では東南アジア諸国への輸出を中心に業務拡大中。その中でハラール認証の重要性を痛感し、2019年11月に認証取得。翌月にマレーシア・クアラルンプールに赴任。2020年10月、現地主力商社との契約を締結させ、同年12月からマレーシアの現地高級小売店及びEコマースにて販売開始。「日本ハラール商品とマレーシアを繋ぐ架け橋になることで、日本の美味しさを多くの方に届けたい。」と言う熱い想いを持つようになり、2021年6月よりSALAM117社と現地小売店、商社協力の元、日本ハラール商品・テストマーケティング事業をスタートさせる。