今回は、「ハラール認証を取得し、将来的に海外に輸出したい」と考えられている方向けに、イスラム国家「マレーシア」の一大商戦イベント「ハリラヤ・プアサ」についてご紹介します。ハリラヤ・プアサはハラール認証を取得している日本食品にとって、大きなビジネスチャンスを秘めていると言われています。ぜひご覧ください。

ハリラヤ・プアサとは?

ハリラヤ風景
ハリラヤと呼ばれるラマダン明けに行われるシーズンイベント。日本で言う年末商戦、Xmas商戦のように各社がしのぎを削る年に一度のビッグイベント

ハリラヤ・プアサ(Hari Raya Puasa ※プアサ=断食)とは、イスラム教徒の断食月であるラマダン明けの休日のことを指します。

そして、断食の期間が終了したことをお祝いするシーズンイベントでもあります。

マレーシアは人口の6割以上がイスラム教徒を占めています。そんなマレーシアのイスラム教徒にとって、ハリラヤ・プアサは「おめでたい日」となり、街はデコレーションで彩られ、お祭りムードとなります。

【補足】ラマダン(ラマダーン)とは?

ラマダンとは、イスラム教の五行の一つである断食のことを言います。イスラム教国家であるマレーシアでは毎年ラマダンが一ヶ月間実施され、この間は日の出期間の飲食は禁止となります。

尚、開催時期似関しては、イスラム教は太陽暦を採用しているので、毎年開始時期が異なります。(2021年は5月開催)

ラマダンを行う理由についてわかりやすくJTBさんがまとめていますので、下記に引用します。

なぜイスラム教徒は断食を行うのでしょうか。 「ラマダン」を「断食を行う期間」と記しましたが、厳密には「断食」には「サウム=斎戒(欲を戒める)」の意味があり、ラマダンの期間中は飲食だけでなく、性行為、ケンカ、他人の悪口などを慎しまなければならないとのことです。世俗的な私利私欲を抑えることによって、堕落した考えを捨て自己を鍛錬し、神への献身と奉仕に没頭するのが「ラマダン」です。この1か月の間にコーランを読み直し、心静かに過ごします。 ちなみにイスラム教の五行とは、「信仰告白(シャハーダ)」「礼拝(サラー)」「喜捨(ザカート)」「断食(サウム)」「巡礼(ハッジ)」。ラマダンの期間中、イスラム教徒は貧しい人々への寄付を募ったり、恵まれない人々に日没後の夕食をごちそうしたりします。この習慣からか、相手がイスラム教徒でなくても、人を日没後の食事に呼ぶことが増えるようです。

引用元: JTB 海外観光ガイド 「マレーシア・イスラム教行事「ラマダン」とは😌?」

ハリラヤ・プアサの経済

一見ビジネス的には厳しい印象ですが、ラマダン明けの「ハリラヤ・プアサ」という断食明けに盛大なお祭りが開催され、これがマレーシアにおける一大イベントとなっています。ラマダン明けに、親戚周りをして一緒に食事をとります。ラマダンの終盤になると、ハリラヤ・プアサに備えて帰省する人も増え、経済活動が活発になります。

ハリラヤ・プアサの特徴

ハリラヤ・プアサでは親戚や友人にギフトを渡す習慣があり、多くの小売店ではギフト商戦(ハリラヤ・ギフト)に備えて準備しています。写真はクアラルンプールの高級住宅街「Bangsar」にあるモール「Bangsar Shopping Centre」の様子です。ハリラヤのカラーである、緑や黄を基調としたパッケージデザインでギフトボックスが陳列されています。もちろん高級小売店だけはなく、街中の小売店やモールは緑と黄色(コンドミニアムの出入り口までも)に綺麗に装飾され、それはまさに日本で言う「お正月」のイメージで例えるとわかりやすいと思います。

また、コロナ禍の影響もありEコマースでは「ハリラヤ・セール」が開催され、たくさんの人々に利用されました。

日本商品がハリラヤ・プアサ商戦に最適な3つの理由

ハリラヤ風景
ラマダン需要で賑わうマレーシアのモール。各社はギフトパッケージを活用し、この時期大幅に売上を伸ばすという。

2021年5月のハリラヤ・プアサでの販売事例に基づいて日本商品がハリラヤ・プアサ商戦に最適な3つの理由を以下にご紹介します。

希少であることから差別化できる

残念ながら、マレーシアでは日本のハラール認証取得商品を見かけることは非常に限定的です。(※理由は別の記事でご紹介します。)そう言った背景もあり、「日本食≠ハラール」の印象を持たれている方が多く、店頭販売で勧めてもほとんどのムスリムの方はハラールマークを確認します。

逆を言えば、「ハラールと分かれば購入してもらえる可能性があります」。実際に弊社が販売するハラール菓子は、試食販売でもムスリムの方に購入頂いており、Eコマースの方ではムスリムの購入者が増えています。購入理由を聞いてみると、

「友人の紹介。日本の商品でハラールは珍しいので購入した。」

と多方面から反響を得ています。

日本の文化(東京、大阪、アニメ等)には興味はあるが、食に関してはこれまで接点がなかったムスリムの人々が多いのも事実です。ハラール認証という手段に圧倒的な先行者利益があると言えます。そんなタイミングで日本で言うお正月のようなシーズンイベントである「ハリラヤ・プアサ」で商品PRを行えば、ムスリムの人々からの認知を向上させることができるでしょう。

意外に大きい法人需要

当社として初めて迎えた2021年ハリラヤ商戦で意外な収穫だったのは「法人需要」です。

行動制限と商品数が限定的な中での取り組みではありましたが、結果として定期的に受注できる顧客開拓に成功しました。

ポイントは「日系企業の現地法人」です。

皆さんがご存知のような商社、銀行、メーカー(自動車、機械、食品など)など、多くの日系企業がここマレーシアに現地法人を設立しています。Jetro発表の日系企業進出状況(2020年2月)を見ると、1,544社という進出状況で、在留邦人は2万6千人程です。

昨年、マレーシアで知り合った日系メーカーの営業マンから、

「弊社の社長がいつも手土産で困っている。相手がムスリムだからハラール商品しか渡せない。日本食はハラールがないから。」

と言う相談を受けました。試しに当社の「ハラールギフトセット」を提案してみたところ、話が進み、ハリラヤの法人ギフトとして40セット受注する事に成功しました。

そして、

「弊社も日本企業なので、せっかくの手土産は日本のハラール商品だと話のネタにもなって良い」

と、先方の社長から直々に嬉しいお声をいただきました。

他に、別の企業からも20セット受注し、ハリラヤにおける法人ギフト需要は大きい事を確信しました。また、実績から法人の販促利用にも需要があるということもわかりました。日系自動車メーカーのディーラーは、新車購入の方にプレゼントを定期的に開催しており、プレゼントの相手を選ばないハラール商品の需要は想像できないような所に多く隠れています。

ハリラヤ商戦×現地EC

マレーシアのEコーマスと言えば、現在、

  • 「Lazada」
  • 「Shopee」

が二大巨塔となっています。

コロナ禍の影響により、マレーシアでも日本同様にオンラインショッピングの需要が爆発的に伸びています。弊社も自社商品を販売するサイトを上記2社で展開しており、毎月ローカルユーザーからの受注も順調に増えている状況です。

既に多くの日本食品がEコーマスで販売されていますが、上述の通り日本のハラール商品は皆無に等しい状況です。ちなみに2021年のハリラヤ商戦では、「Japan + Hala + Hari Raya」の切り口で挑戦しました。自社商品の詰め合わせセットを提案し、数は少ないですが5セット販売に成功しています。コロナ禍で外出が厳しいタイミングにも関わらず、個人の方から受注できた事は大きな収穫と言えます。各Eコマースの検索エンジンの対策も必要にはなりますが、今後も成長が期待できるE コマースへの出品に関してやらない手はありません。

まとめ

今回は、ハリラヤ・プアサの概要と、日本のハラール商品がハリラヤ・プアサ商戦に最適な3つの理由についてご紹介しました。

上述の通り、日本ハラール商品はマレーシアの市場で見かけることは今の所限定的です。しかし、逆を言えばチャンスとなります。弊社で知る限りですと日本のハラール商品を販売するメーカーはまだ数社ほどしかありません。

まずは企業の商品が「ハラールである」と知ってもらう必要があります。その方法として、日本のお正月のようなイベントである「ハリラヤ・プアサ」は最高の機会となります。正攻法である小売店でのギフト販売だけでなく、日系企業同士のコラボ企画である「法人ギフト + 日本ハラール」はオンリーワンの取り組みです。ハラール認証という手段が差別化となるアーリーアダプターの初期の段階ですので、認証取得を検討されている方は是非一度問い合わせください。弊社のような中小企業でもマレーシアでチャレンジすることができ、実績を得ています。一歩踏み出してはいかがでしょうか?


著者プロフィール

著者プロフィール

有馬 幹人 氏
神戸の豆菓子メーカー(株)有馬芳香堂の専務取締役 、マレーシア法人Arima Food Lab Sdn.Bhd.のManaging Director。 専門商社での勤務を経て大学院で修士課程を修了後、家業である(株)有馬芳香堂に入社。業界でいち早くEコマースでの集客に注力し、1年でPV数60倍・売上5倍を達成。2016年から海外輸出を開始し、現在では東南アジア諸国への輸出を中心に業務拡大中。その中でハラール認証の重要性を痛感し、2019年11月に認証取得。翌月にマレーシア・クアラルンプールに赴任。2020年10月、現地主力商社との契約を締結させ、同年12月からマレーシアの現地高級小売店及びEコマースにて販売開始。「日本ハラール商品とマレーシアを繋ぐ架け橋になることで、日本の美味しさを多くの方に届けたい。」と言う熱い想いを持つようになり、2021年6月よりSALAM117社と現地小売店、商社協力の元、日本ハラール商品・テストマーケティング事業をスタートさせる。