2020年はどの企業にとっても予想外の結果を迎える形となったことと思います。ハラールビジネスにおいても、当初大きな飛躍のトリガーと期待されていた東京オリンピックの延期や、インバウンド旅行者の激減など、海外進出に向けて準備の年にしようと思っていた企業の計画は大幅に変更またはストップせざるを得なかったのではないでしょうか。
一方で、大きく変わる環境の中、ハラールビジネスの新しい可能性を見出し成功したケースもHBO編集部では見かけてきました。そこで今回は、実際に今ハラールビジネスに取り組んでいる企業の情報をもとに、ハラール専門家の菅野氏が予想する2021年のハラール市場のトレンドについていくつかポイントを挙げてみたいと思います。

2021年の展示会開催は去年より増えると予想

2020年は多くの展示会がコロナ感染拡大防止のために延期や中止となりました。2021年は展示会の開催自体は2020年よりも増えると言われていますが、来場者自体は以前のように盛況というわけにはいかず、過去のような商談多数という事は期待しにくいのではと想定されます。
海外の多くのハラール展示会もオンラインでの開催を決定していますが、果たしてオンライン開催に参加して企業が求める効果がどれけ得られるのかについては、もう少し検証が必要ではないでしょうか。

オンライン商談会の売り手・買い手の本気度は

今までは展示会に付随する形で開催される事も多かった「ビジネスマッチング」や「商談会」に関しても、昨年に引き続きオンライン商談会の形での開催が増える事が予想されます。
オンライン化によって、本来地理的制限によって参加できなかった地方の企業にチャンスが生まれるなど、メリットもあったようですが、実際にオンライン商談会に参加してみたものの、相手に「本気度を感じなかった」という声が売り手側からも買い手側からも聞こえてきたのが個人的には印象に残っています。やはり画面を通じての商談だと、商品の良さや熱意を伝えにくいという要因もあるの\かも知れません。
海外バイヤーとのオンライン商談会に付き添った際は、海外バイヤーからは「日本企業は海外市場に売るためのポイントを全く準備できていない、日本で売る想定の範囲の説明しか出来ていない」と感想を聞いたこともあります。気軽に参加できるからといって、準備がおろそかになってしまうようなケースも見られるようです。

コロナで急成長を遂げるねらい目市場

以前から日本企業がハラール認証を取得した後に取り組む施策としては上記2つがスタンダードでしたが、2020年はコロナにより、国内のハラール食品販売市場が大幅に伸びました。ハラール食品専門店だけでなく、業務スーパーのような独自に海外から商品を仕入れていてハラールマーク付のものが多かった業態は、在日ムスリムの日々の食事を支えることとなりました。

特にハラールスーパーのオンライン販売売上額の成長が著しく、住んでいる地域の近くに十分なハラール食材が置いていない環境にいる多くの在日ムスリムからの注文が急激に増えています。

高度技術職のビザで2020年度も多くのインドネシアやバングラデシュといったムスリムの方が入国して地方での生活を開始したため、地域にハラールスーパーが無くても定期的にネットでハラールショップから注文するライフサイクル需要が沢山生まれています。
今までであれば自国に帰省するたびに現地の食材を持って帰ってこれた在日ムスリムも、去年から今年は当面自由に行き来が出来ないため、ますます国内ハラール食品市場は増加の一途を辿ります。
ショップに足を運ばなくてもオンラインで最短翌日届いてしまうエコシステムは、日本に住みハラール食品を渇望するムスリムにとっての救世主となりました。

ハラール2021トレンド予想まとめ

2021年は国内から始める!売れている場所に置く!

毎日3食ハラール食品を必要とするムスリムが、日本にはすでに20-30万人生活していると言われています。そして、「住む地域にハラール食品が無い」という需要とコロナ禍で自由に買いに行けない問題を解決し急成長しているのが、ハラール食品専門オンラインショップです。
ただし、いくら日本にあるショップであっても、日本企業にとって外国人が経営するショップとの交渉はなかなかハードルが高いのも事実です。外国人オーナーは、普段売れているものだけで十分で、日本企業のハラール商品を置いても売れないだろう、と決めてかかる方も多いからです。そこで、HBOでは、毎日全国の在日ムスリム顧客にハラール食品をオンライン販売している日系ハラールショップと提携し、「日本ハラール食品テストマーケティング」のサービスを提供しています。
各企業のオンラインショップを在日ムスリム向けに認知度を上げていくことも出来るとは思いますが、毎週のように必須ハラール食品購入する売れ筋ハラールショップの中で日本の珍しいハラール食品を見かけると「ついで買い」してしまう心理は、日本人
にも理解しやすいのではないでしょうか。
展示会のような準備や人員の確保がほぼゼロで、始めたい時にいつでも始められる、国内ハラールショップでのテスト販売でムスリムの好みなどを収集しつつ、来たる海外市場進出に向けてのヒントや準備を行うといった使い方も、コロナの収束が見えない中、今すぐ出来て次につながる打ち手という点で、チャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。


プロフィール
菅野幸介氏(SALAM117株式会社 代表取締役)

ノウハウのシェアは日常茶飯事という菅野氏


菅野氏経歴:日系大手電機メーカーのエンジニア、大手経営コンサルティングファーム中国支社立上げに参加し日本企業の海外事業売上Up等に携わった後、日本帰国し通販系コスメ事業に携わる中でハラールと出会う。ハラール市場との出会いはわずか6年程度ながら、日本商品を海外の日系ではない本物のローカル実販路に乗せる独自の販路開拓を続け、シンガポール・中国を中心に毎月50ケース以上の輸出を行いつつ、西千葉でSALAM117というハラールショップを営み、日本30万人と言われる在日ムスリムに店舗と通販で日夜売上を伸ばし続ける、根っからの「実売のプロ」。机上の空論および他力本願の販路を紹介する人が苦手で、販促に本気で取り組むメーカーのみを相手に日々自身が開拓した販路とハラールビジネスのノウハウを伝授している。特技・趣味は中国上海で最短日程にて店舗開設できること。