2020年10月、東京都北区にある認可保育園で、「ハラール認証」を受けた給食の提供を開始した「つぼみ会」様に取材を行いました。
保育園の給食にハラール認証を取得するに至ったきっかけや、取得までの流れ、取得後の反応など聞いてきました。
飲食店や食品・美容メーカーなどでは取得浸透しつつありますが、つぼみ会様は保育園の給食を作る調理場に取得を実現させたということでNHKでも特集されています。ぜひこちらもご覧ください。
※【外部リンク】ハラール認証の給食保育園で始まる イスラム教の子も安心 東京 | NHKニュース
今回取材させていただいた方
つぼみ会 LIFE SCHOOL代表 中嶋雄一郎 様
東京、埼玉で複数の認可保育園や学童施設を運営されているつぼみ会代表の中嶋様。
【外部リンク】LIFE SCHOOL|社会福祉法人つぼみ会
菅野幸介氏
HBOでもお馴染みのハラール専門のマーケティング会社Islamic Food Consulting代表の菅野幸介氏。
つぼみ会様のハラール認証取得のコンサルタントを担当。ハラール認証のスムーズな取得をサポートし、認可保育園の調理場の認証取得を実現しました。
つぼみ会様について
つぼみ会様の事業内容

ーーまずは、つぼみ会様の事業について簡単に教えていただけますでしょうか?
中嶋様:現在、認可保育園や学童などの学童・保育事業を行っています。
東京と埼玉で認可保育園が8園、学童が1園あります。
保育事業を始めたきっかけ
ーー学童保育事業を始めたきっかけを教えてださい。
中嶋様:元々、父と母が始めました。最初は家庭保育教室のようなことを母が行っていました。
平成13年に埼玉県さいたま市で認可を受け保育園を開園しました。かれこれ20年ほど経ちます。
当時、私は全然異なる仕事をしていたんですが、開園してから1年程で二つ目の保育施設を建てようという話があり、この業界に入りました。
ハラール認証取得のきっかけ
ーー今回、保育園の給食にハラール認証を取得することになったきっかけを教えてください。
中嶋様:まず、複数運営している認可保育園の中で、東京の北区にある認可保育園『LIFE SCHOOL 桐ケ丘 こどものもり』でハラール認証を受けた給食の提供をスタートしました。
この園には、現在130人ほどの園児が在籍していて、このうちの8人の園児がムスリム(イスラム教徒)の園児なんです。
ムスリムの園児は近年増加していて、
ムスリムの保護者や子どもたちに「安心して給食を食べてもらおう」
と今回、ハラール認証を取得することを決めました。
ハラール認証取得後の反応
保護者の反応
ーー実際にハラール認証を取得して、ムスリム園児の保護者の反応はいかがでしたか?
中嶋様:まだ認証取得したばかりですが、
・毎日の献立チェックをしなくて良くなった
・「子供たちに残さずキレイに食べてね」って毎日伝えることができる。
・在日ムスリムに目を向けてくれている安心感
など、ハラール認証の取得をお伝えしたところ早々に感謝のお言葉をいただきました。
給食にハラール認証を導入したことによって、保護者の方にとっては様々な不安が解消されたと思っています。
お子様をお預かりすることで感謝されることはよくありますけど、給食にハラール対応したことで感謝を通り越して感動していただいている保護者の方もいらっしゃいました。それだけ、在日ムスリムの方にとってハラールは重要なことなんだなって思いましたね。
保育士の反応
ーーでは、保育園で働く保育士さんの反応はどうですか
中嶋様:正直まだ取得したばかりなので、まだ保育士側はピンッときていないかもしれませんが、在日ムスリムの保護者の方たちに給食の説明がとてもスムーズに行えるようになりました。
取得前は給食の献立メニューひとつひとつ気に掛けなくてはいけないということがありましたが、ハラール認証を取得したことによって保護者の方の理解をスムーズに得ることが出来るようになりました。
給食にハラール認証を導入して感じたメリット
ーーその中で、今回ハラール認証を取得して大きくメリットに感じたことがあれば教えてください。
中嶋様:とくに大きくメリットとして感じているのは、在日ムスリムの保護者へ給食の説明がスムーズになったことにより、
・在日ムスリムの保護者とのバランスが取りやすくなった
・ムスリム園児たちも気にせず給食を食べることができるようになった
一言で言いますと、
在日ムスリムの方にとってたくさん点在していた細かな不安を払拭し、「安心」をお届けすることができた
のかなと思います。
何が「イスラム教的にハラールなのか?」って実は保育園側からすると理解しようにも難しいところがたくさんあるのです。
例えば、出身国や地域によって、「あそこの国出身の方たちはハラールと言ってはいるけど他の国出身の方たちは違うという」ということもあります。
実はこの問題を解決しようとするのはとても大変なことで、保育園独自で対応していくには無理を感じていました。
保育園側としては楽しい給食をおいしく園児に食べてもらいたいわけです。ただ、ハラールではない給食が出ていたら園児たちも安心しておいしく食べることができません。
それを解決できたのが「ハラール認証」なんです。これを取得することによって保護者の方たちに理解を得ることができ、ハラール認証団体によってチェックを受けた給食を園児たちが細かいことを気にせず食べることができるようになりました。
ハラール認証の取得で大変だったこと
ーーハラール認証を取得するにあたって大変だったことなど教えていただけますでしょうか?
中嶋様:実は、ハラール認証の取得はハラール情報に詳しいハラールビジネスの専門家である菅野さんに共通の友人を通じてお願いしていたので、事務的な作業に関してはとてもスムーズに取得することができました。丁寧に一つ一つ教えていただいたので「それに沿って取得まで進めていった」という感じです。本当にお願いしてよかったと思います。
唯一大変だったことは、
「給食のメニュー」と「調理場」の見直し
ですね。
通常の給食とムスリム園児向けの給食(ハラール給食)とでメニューが異なります。
食材の見直しはもちろん調理場の区分けや調理器具の置き場所などのレイアウト変更など行いました。
あとは調理の流れなども少し見直しを行いました。スムーズに通常の給食とハラール給食の双方を調理しなくてはいけませんからね。
とはいえ、給食のメニューすべてが違うというわけではなく、例えば豚肉を使うメニューがあった際に、ハラールな具材に変更するといったような形で適材適所で変更しています。
ですので大きくメニューを変えるようなことはないですね。そんなことから当園では大規模な工事の必要はありませんでした。
もちろん、ハラール給食を導入直後は調理工程が若干変わりますので、栄養士さんや調理師さんとしては新しい献立を考えたり、調理工程を覚えなくてはいけないという負担はあったと思います。
【補足事項】ハラール認証の取得は必須?
ーーちなみにハラールビジネスを専門家のとされる菅野さんにお聞きしたいのですが、ハラール認証の取得の代わりに、独自にハラール対応を考えて企業が実践することは可能ですか?
菅野氏:基本は、「イスラム教の法律に則っているのか?」ということを我々日本人が勝手に自己判断で言ってしまうことには、かなりのリスクがあります。もちろん認証団体からハラール認証を取得しなければハラールマークを提示することはできません。
「ハラール対応してますよ」というような独自判断した結果を自分の施設やHPなどに掲載して謳ったとしても、在日ムスリムの方たちに大きな安心を与えることは難しいと思います。
よく「NOアルコール、NOポーク(※参考、以下関連記事)」の表示が取り上げられたりしますが、ハラール基準に準拠しているかどうかの判断は、ハラール認証団体によってきちんと行われる必要があります。
これはムスリムがハラールマークをどれだけ拠り所にしているか、という信仰上の背景から来る理由で、この点について日本企業は実際のムスリムの声をもっと聴いていく必要があると思っています。
※【関連記事】ハラール認証を取得しないムスリムマーケティングは有効か?
ムスリムが生活する上で一番の優先順位である「ハラールかどうか」をまずクリアにしてあげる事、つまり「ハラールだよ」と示してあげることが、マーケティングにおいても何より大事だということが言えます。
ハラール認証を取得するまでの審査はどうだった?
ーーちなみに、ハラール認証を取得するまでの審査はどんなことをされましたか?
中嶋様:まず、認証団体の方からレクチャーがあります。
「栄養士さんや調理師さんにハラールとはこういうものですよ」というような概要や基本知識をレクチャーしていただきました。
審査については、調理工程や使用する具材などのチェックをするんですが、意外にもとても厳しいイメージはなく、認証員さんから「絶対これをやってください」とか「これは絶対ダメ!」というような押し付けるような指導は少なく、今ある給食メニューや調理場を見て、「今ある環境大きく変えることなく、ハラールを実現するにはどうしたらいいか?」ということを考慮の上、提案していただきました。
ーー複数の施設や店舗を持つ企業の場合、それぞれの施設で取得しないといけないんですか?
菅野氏:はい、施設ごとに取得する必要があります。
実際に調理・加工をする現場ごとに環境や条件が異なるので「1つの施設でOKだから他もOK」ということにはなりません。
つぼみ会様で例えますと調理場ですね。
レストランやホテル等でも同様に、それぞれの調理場ごとの監査を受けます。
ハラールについての理解を各現場のスタッフにも浸透させてもらう意味でも、ハラール認証団体の監査の方が施設ごとにレクチャーを行ってくれます。
まとめ
ーー中嶋様、本日はたくさんの質問にお答えいただきありがとうございました。
保育園はもちろん、ムスリムユーザーを抱える企業様にとって参考になったかと思います。
中嶋様:在日ムスリムの園児たちや保護者の方たちが安心して楽しく給食を食べれるようにならないかと考えていた時に「ハラール認証」という制度を知ったはいいものの、導入に関しては知識がなく悩んでいました。そこで専門家である菅野さんに相談したところ、ハラール認証の取得方法や費用の見積もり、認証団体との仲介、そして実際に取得からその後のサポートまでしていただいて、本当に専門家に相談してよかったなと感じています。
菅野氏:現在、日本ではレストランや食品メーカーでハラール認証を取得している企業が増えています。しかし、保育園などの施設での取得はまだまだ浸透していない、そもそも認知されていないのがほとんどで、今回のつぼみ会様のハラール認証取得は在日ムスリムの人たちに大きな希望を与えたのではと思っています。同じハラール業界にいる人間として本当に僕は感謝ですね。これからさらにいろんな業界にハラール認証制度を知ってもらいたいなと思っています。
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