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【ハラール肉問題】スタンによる屠殺を取るか?悩む食肉業界

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ハラール肉問題 スタンによるト殺を取るか?悩む食肉業界

イスラム教においては、スタン(気絶)させてからと殺することを禁じています。
この理由は、動物が怯えてしまい、と殺前に動物が本来自然であるべき状態でないまま肉として加工されるから、という背景があります。

ニュース:スタン無し屠殺の肉はオーガニックではないと判決
と殺前にスタン(気絶)させず、イスラム宗教的儀式に基づいて屠殺されたハラール肉は、動物福祉の考えに基づくとオーガニックとは言えないとEUの裁判所が判決を下した。

「裁判所としては、屠殺時に事前に気絶させることが動物の尊厳を最も損なわないテクニックだという科学的研究を参照とした」と欧州裁判所は発表した。

EUのオーガニックラベルを取得するには、生産者は最高レベルの動物尊厳基準を遵守する必要がある、と裁判所は指摘した。
引用参考:[https://reurl.cc/Mpqzp]

スタン無し屠殺は動物虐待か?

食べ物として肉を頂く際に、アラーの名のもとに有難くあなたの肉を頂きます、と動物に対して話しかける(お祈りをする)儀式が、ハラール肉のと殺には存在します。

対して、上記のEU裁判所の判断は、全く真逆の結論となっています。スタンさせる事こそが科学的に動物の尊厳を最も損なわない、という事のようです。

動物の本音は?

果たして、と殺される動物がスタンした方が尊厳を損なわないという事を実証できる化学的根拠はあるのでしょうか。
イスラム教はもちろん、コーランの教えに沿っていますから、科学的かどうかという点の議論からは外れているかも知れません。

しかし、EU裁判所が主張する、「動物の尊厳」を判断する基準が現代科学にあるとはとうてい思えないのは私だけでしょうか。
動物の気持ちや声が聴ける装置があったとしても、スタンされずに今から殺される牛が、「俺の尊厳を奪いやがって!」と言うことは、とても想像できません。
あくまで科学的研究であって、確定的根拠でない点も少し解せない所があります。

むしろ、動物に対して「アラーの名のもとに美味しく有難く頂きます」という意味のお祈りを行い、怖がらないようにスタンせずにと殺を行うイスラム方式のほうが、よほど自然の理にかなっているような気がしてしまうのは私がEU的狩猟民族ではなく、農耕民族だからでしょうか。(狩猟民族であるEUの方々が動物の尊厳について議論するのもまた、少し変な気がしますが……。)

ハラール肉か?オーガニック肉か?選択を迫られる企業

この議論は全く別の2つの概念を用いられているため、妥協点を求めるのは難しいと思います。
そうなると、日本企業としては、

・ハラール認証を取得するためにスタンを行わないと殺で、18億人のムスリム向けに提供するのか?
・スタンを行ってオーガニック(またはハラール以外の)市場を狙うのか?

という選択を迫られることになります。

どちらの市場をターゲットにするか?

「どちらの市場をターゲットにするか?」という明確な方向性が必要になります。

日本の肉業者が見落としがちなこと: ハラール > 味

日本のと殺を行う会社や和牛を輸出したい業者の方から、時々こんな質問を受けます。

「ムスリム向けに肉を輸出したいが、ハラール認証ではと殺のスタンを認めていないので、肉の味がどうしても落ちるので避けたい。どうしたらよいか。」

この質問の背景には、日本人ならではの、「おいしい最高品質の肉を、世界に届けたい」という熱い思いがあるのを私は知っています。

ただし、イスラム教で決まっていること守るのは、ムスリムにとって呼吸をするのと同じ位、当たり前で大事なことです。
ハラールとは、「ある決め事を守る、決め事に沿っている」という意味ですので、イスラム教で決められたことを守っていない方法で提供される食品や製品を、ムスリムは好んで選ぶことができないのです。
※【関連リンク】ハラールとは?結局何なのか?【3分で完全理解】

この「ハラールかどうか> 味や品質」というムスリムの根本的ルール・優先度に対して、日本人は無頓着すぎると私は感じています。

おいしい・不味い、高い・安い、有名・無名などの価値観よりも最上級にあるものが、「ハラールかどうか」なのです。

ハラール基準に沿ったものだけが、「ムスリム消費者の選定のスタートラインに立つ」という基本ルールを認識できないと、日本企業は永遠に悩みのループで立ち止まることになるでしょう。

美味しさや品質をムスリムは重要視しない、というわけではありません。
その、日本では重要視される基準のもっと遥か高い所、もっとも最初に来る判断基準が、ハラールかどうかなのです。

ムスリムにとって、ハラール認証の無いものは(自然そのものの野菜などの素材を除き)いくら豚やアルコールを含んでいない商品でもシュブハ(疑わしいもの)となります。

例えば、スーパーにハラール肉と、シュブハ(ハラール認証の無い、疑わしい肉)が並んでいたら、味やブランドの検討をするまでもなく、ムスリムはハラール肉を選びます。

ハラールかどうか?それが答えになる

繰り返しになりますが、ムスリム市場、ハラール市場を狙うのであれば、下手な変化球を投げるプランは捨てて、

正攻法で正面からハラール認証を取得すること。

これに尽きます。

たまに、「輸出する国ごとにハラール認証団体が異なったり基準が違うらしいので面倒に感じる」という声も聞きますが、逆に不安になるのは、「かなりの海外市場で取引に慣れた百戦錬磨の企業でない限り、そんなに一度に多数の国と取引を始めることは稀ではないだろうか?」という事です。

20年あまりの海外ビジネス経験から言わせてもらうと、ある海外一国の一企業と取引するのでさえ、通常は1年近く相手の事を調べ、リスク回避のための準備を行い、条件などの検討を行ってはじめてトライアルに進みます。

それを同時に複数の国の多数の企業と並行して行えるような企業は、現地各国に駐在員を置き常に現地情報を把握している、名前の通った大手商社や大手企業くらいしか記憶にありません。

将棋で言うと、まだ将棋のルールを覚えたばかりの人間が、いきなりプロと4-5面指しを行うようなものです。
ちなみに同じハラール・イスラム教の国といっても、それぞれの国の文化背景・商習慣は全く異なるので、同じ将棋の4-5面指しとは限りません。(時には麻雀やポーカールールを覚える羽目に……。)

まとめ

少し話が脱線しましたが、ハラール認証を取得する際に同時に考慮すべきは、まず最初に海外で販売したいのはどの国だろうか?という所です。
ハラール認証を取得すれば18億人全員すべての国で今すぐ売れる、というわけではありません。

ハラール基準のほかに、各国にはそれぞれの通関ルール、現地検疫ルール、現地販売ルール、サプライチェーン商習慣などの個別の違いが存在します。
それらを考慮したうえで、自分の会社に合った市場はどこか、どこが一番売れそうか(必ずしもムスリム人口が多い市場が自社にあっているとは限りません)を事前に検討することが、ハラール市場攻略の大事な一歩目だ、と私は考えています。


プロフィール
菅野幸介氏(Islamic Food Consulting代表)

菅野幸介氏のプロフィール画像
菅野氏経歴:日系大手電機メーカーのエンジニア、上場経営コンサルティング会社の中国支社立上げ及び日本企業の海外支社業績Up支援などを経た後、熊本にある通販系高級基礎化粧品のグローバル事業責任者として「熊本に居ながら世界に売る」手法を洗練する中でハラールと出会う。認証取得に立ち会わなかった為、当初のハラール認証に対する印象は「懐疑的」でしかなく、認証団体も詐欺のようなものだと捉えていたが、ハラール市場についての展望と具体的展開手法を認証団体理事と質疑応答する中で、ハラールという市場性を確信し、独立を決意、「日本ハラール商品を海外市場に売る」事に特化したIslamic Food Consultingの代表に就任、現在に至る。
シンガポール・中国・バーレーン・オマーン等のハラール市場バイヤーとの直接取引の他、自身が顧問を務める西千葉モスク1階のハラールショップ「SALAM117」の経営を1か月で劇的改善させ、売上5倍+黒字化達成に導くなど、机上の空論ではない実弾と実績をベースにしたアドバイスは認証取得後の日本企業からも定評がある。

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