コロナによって市場環境は完全に変わりました。
東京オリンピック開催により増えるはずだった旅行者はほぼ0となり、インバウンド市場は現状全滅に近い状態です。
その中でも売上を伸ばし続けるハラール商品もあれば、以前より売れなくなったものもあります。
その違いについて、今回は簡潔に説明します。

販売方法の見直し

おさらいとしては、以前の記事で紹介した、3原則を復習しておいて頂けると理解が早いと思います。

  • 1)ハラール市場には3種類ある
  • 2)それぞれの難易度・ターゲット層・価格層が異なる
  • 3) 先行ぶっちぎりの企業しか儲からない

ハラール市場に限った話ではないのですが、まず売れないのは、商品が悪いからではないケースが殆どです。
状況やお客様の属性に合った調整や対応が出来ていないケースです。
売れないという企業の殆どが、コロナ以前と同じ売り方のまま続けています。

※【関連リンク】ハラール市場は儲かるのか?成功の秘訣【プロが解説】

コロナで注目が高まった日本ハラル市場

世界は変わりました。
我々日本企業も、今すぐ対応が必要です。
今すぐハラール市場で売りたいなら在日ムスリムをターゲットにマーケティングを展開していく必要があります。
コロナ後が落ち着いた世界を待ってから、ゆっくり拡販するのであれば別ですが、今すぐハラール市場で売上を伸ばすためには、「在日ムスリム」層をターゲットに戦略を立てるべきです。

彼らは日本に居て毎日、ハラール食品を必要としているのです。
在日ムスリムが買いたくなるハラール商品の販売方法とは難しいことを抜きにして、商売は基本「買い手が9割」です。
売り手の思いなど、買い手からしたら正直どうでもいいのです。
買い手が買いたい!と思える商品の販売手法かどうか、それに限ります。
では、上記で説明した当面の日本企業にとって唯一のターゲットとなる、「在日ムスリムが買いたい!」と思える商品とは、どんなものでしょうか。

毎日ハラール商品を販売しているSALAM117の売上データをもとに分析してみた結果、以下の2つのポイントが共通点として浮かび上がってきました。

  • ムスリムにとって必要かどうか
  • 買いやすい価格帯であるか

ムスリムにとって必要かどうか

ムスリムの出身国によっても違いますが、基本的に売れ筋は、

  • インスタント麺
  • シーズニング
  • スパイス
  • ジュース
  • クッキー

上記のような日常的に口にするものです。
嗜好品ももちろん嫌いではないですが、まず最初に毎日必要となるものが選ばれる傾向があります。
毎日買うものは、その国のソウルフードであれば少々高くても買いますし(例:テンペやインドネシアの赤たまねぎ)、そうでなければ安いものを探します。(例:インスタントヌードルは一番安いインドネシア製がどの国出身のムスリムにも好まれる)
多くの日本企業の製品は、この部類に入りづらいものがハラール対応している可能性が高いですが、一部醤油のように、回転すしが大好きな在日ムスリムに需要が高い商品も存在します。

※【関連リンク】ハラール対応してほしい!日本食品は?【ムスリムの声BEST10】

買いやすい価格帯であるか

もし御社の商品が1に当てはまらなくても、まだあきらめる必要はありません。
彼らは何も、毎日のパンやヌードルだけを買うわけではないのです。
我々がスーパーで主食や野菜のついでにデザートを買うように、在日ムスリムだって楽しみのために買うことは日常茶飯事です。
ただし、売り手である日本企業と、在日ムスリムの購入者の間には未だにかなり大きな「溝」があります。
日本企業は、「味が良いから売れる」、「材料にこだわっているから売れる」と思っている節があります。
「食べたらわかる」という口癖をよく展示会で耳にします。

しかし、在日ムスリムからすると、一番気になるのは日本企業の商品そのものではなく、「売り方」です。
なぜか(これはぼくも少し気になっているのですが)商品パッケージが大きめのものが多く、その分販売価格も高くなってしまっているため、初めて購入する在日ムスリム消費者の手にとってもらえる確率がかなり低くなっています。


「もし100円でお試しパックがあれば買ってみるのに」
「もし小分けのパッケージがあれば試してみるのに」

というのは、在日ムスリムからよく聞かれる感想です。

日本企業側には、「小分け包装なんて高くつくから非効率だ」とか、「小分け包装は手間だ」という思惑もあるかも知れませんが、いくらハラールマークがついていても、食べたことのない在日ムスリムからすれば、いきなり正規のパッケージ商品を買うほどの勇気はないのです。

ただし、お金を出したくないというわけではないので、100円程度で買ってもらえる「お試しパック」を用意することがコツだと、ぼくは販売データから読み解いています。また、毎日接する在日ムスリム購入者から、そのような声を沢山聞いています。
北海道のハラール取得済牛乳は、本商品としては当然1リットルパックがあるのですが、まずムスリムでの認知度を上げるために、200mlのいちご牛乳やコーヒー牛乳をお手頃価格でムスリムに販売することで、「あの北海道牛乳はハラールだ」ということをわかってもらえるようになりました。

そのPRに貢献している商品は、90円という価格でムスリムのお母さんが買い物のついでに子供に買ってあげやすい価格帯にしてあります。
せんべいや和菓子なども、小さい分量で100円程度でまず手に取ってもらえることを重視し、ムスリムに味を知ってもらってから本商品のPRに移る、という手法も悪くは無いと思います。

重要なことは、

100円程度で販売するものが少し割高であっても、価格そのものが手に取りやすいか?
を重視することです。

本商品が300gで1000円だとして、100円で20gしか入っていなかったとしても、詐欺だとかそういうことを言うムスリムの話は聞いたことがありません。

むしろ、100円前後の商品によって、ムスリムが「ちょっと試してみよう」という気持ちになる確率のほうが高いわけです。
普通のスーパーのレジ横に置かれたガムやキャンディと同じPR効果です。(ちなみにこの手法は、海外ハラールスーパーでも有効ですのでコロナ後にぜひお試しください)
在日ムスリムは「値下げ」を要求しているのではなく、手に取りやすい価格を要求しているだけだ、ということに気づけば、赤字を出すこともなくアプローチできる方法が各社で見えてくると思いますので、ぜひ工夫してみてはいかがでしょうか。

※当然、普通のマーケティングとして、「プロモーション」的にムスリムに対してのみ初期価格を下げるとか割引を行う(認知度獲得のために)というようなことは、ハラール市場においても、在日ムスリム層においても有効だということは追記しておきます。
何らかの投資なくして、新規層の獲得が難しいのは何もハラール市場に限ったことではないはずです。

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協力
菅野幸介氏(Islamic Food Consulting代表)

菅野幸介氏のプロフィール画像

略歴:
琉球大学農学部卒、キャリアの殆どを海外市場で過ごし、業績アップ専門経営コンサルタント・化粧品会社の海外事業等を手掛けるうちに、日本製品xハラール市場の可能性に気づき、2018年に独立、ハラール専門のマーケティング会社Islamic Food Consulting代表となる。口癖は
「売らないならハラール認証を取る必要がない」
「販路を持たない人間はマーケティングコンサルタントではない」
「売るための努力をしないなら情報は取らないほうがいい」
と、一貫して販売・販路にこだわるマーケティングが持ち味。日本国内外のハラール市場・販路について情報を日々自分の足で稼ぐ、ハラールハンター。