「ハラール」や「ハラル」という言葉を日本でも耳にするようになってきました。
ネットで調べても「ハラール認証を取りましょう」とか、「オリンピックに向けてハラールが熱い」といった、広告めいたものが大半か、もしくはイスラム教について長々と説明された、難解な宗教的翻訳文が多くを占めているのが現状です。
今回はハラール(ハラル)とは何なのか、Islamic Food Consultingの代表:菅野氏にわかりやすくまとめていただきました。
初めまして菅野です。
ハラール市場のマーケッターとして実際の販売に関わるようになって6年目になります。
【3分で完全理解できるシリーズ】という事で、ムスリムでもない普通の日本人のぼくがから「これだけ知っていればハラール市場で売れる」というポイントだけを数回にわたりお伝えしたいと思います。
これはぼくが企業の中でハラールを徹底的に知り尽くし、市場戦略に転換してきた経験から来るアドバイスです。
難しいイスラム用語や、マーケティング用語は一切出てこないので、コーヒーでも片手にタブレットやスマホでリラックスしながら読んで頂ければ嬉しいです。
“ハラール”とは?
ハラール(HALAL)とは、合法という言葉の意味を持ちます。
イスラム教で決められたルールでは、
「”飲むと酔っ払うアルコール”と”豚由来のもの”を口にすること」は非合法であるとされています。
イスラム教的なハラール(合法)とは、この2つを含まないものという事になります。
ハラールの反対は“ハラーム”
ちなみに反対の非合法は「ハラーム(HARAM)」と言います。
ハラールを日本人が一番しっくりとくる言葉に言い換えると、「合法」か「非合法」か、ということの「合法」を示すアラビア語です。
Lが合法、Rが非合法(HALALとHARAM)
ちなみにメールで色々ハラール市場についての戦略の相談を行っているとき、HALAL(ハラール)と書くつもりでLがRになってしまい、「菅野さんそれは非合法のほうだから絶対にLとRを間違えないでください」と言われたので、身に染みています。
あくまでも合法を表す言葉
合法かどうか?を表す言葉ですので、これ自体に「アルコールがNG」とか、「豚を食べてはいけない」という意味があるわけではありません。
これはぼくが日本で一番多くの実績を持つハラール認証団体(NAHA)の理事長サイードアクター氏に直接会って確認したことですので、自信をもってお伝えできます。
ハラールという言葉自体にイスラム教的な特殊ルールは入っていません。ここを勘違いすると、あとから大きな戦略の間違いが起こりますので、まずここだけは覚えていただきたいと思います。
ちなみに合法ということは、ある集団で決めたルールにのっとっているか、そうでないかを決めるものなので、日本の法律に対してHALAL(合法)かHARAM(非合法)かという言い方もできます。
日本に住んでいらっしゃるムスリム・イスラム教徒の外国人の方は、イスラム教的なハラール(HALAL)を守りながら、日本法に対してもハラール(合法)であることが求められています。
「コーランに書かれたルールだけ守っていれば、その国の法律やルールを守る必要はない」ということはイスラム社会でも、もちろん許されないのです。
もちろん、日本に居るムスリムに歩きたばこをしていたら注意もできます。
日本のルールや法律を守らないのに、1日5回お祈りをきちんとしても、アラー神はその方を許してはくれない
というのがほんとうのハラールということになります。
グレーゾーン“シュブハ”
イスラム教には、ハラールとハラームの他に、「シュブハ」という概念があります。
シュブハとは「疑わしいもの」という意味です。
ハラーム(非合法)ではないが、完全にハラーム(合法)とは言い切れない、グレーゾーンです。
世の中にはそういうものがあふれていますし、どんどん増えていますね。
世の中はシュブハ(非合法とはいえないが、疑わしいもの)で満ちている……。
なんだか哲学的にも聞こえる名言に思えます。
視覚的にハラールを認識できるハラール認証マーク
ムスリムが食品などひとつひとつ成分を確認するのはとても大変です。
そこで、容易に確認できるように、
“ハラール認証”制度
が登場しました。
食品・医薬品・化粧品・飲食店などにハラールマークを掲載することによって、購入を検討しているムスリムがその商品やサービスが「ハラール」なのか安心して判断ができます。
ハラール認証についてはこちらもご覧ください。
※【関連記事】ハラール認証とは?【概要から活用まで完全理解】
編集後記
これを聞いて100%腑に落ちた方は、かなり清廉潔白な方ではないでしょうか。
ぼくは中国市場ビジネスを主戦場とするため、こんなきっちりした説明を聞いても、「いやいや、そうは言っても合法と非合法で決めきれない事だって沢山世の中にはあるでしょう」とすぐに突っ込みたくなります。
実際、その質問を上記のNAHAサイード理事長に5年前にぶつけてみました。
「サイード先生、世の中ってそんなに簡単に割り切れないですよね?しかも千年前くらいに出来たような宗教が、現代社会のすべてをハラールとハラームで割り切れるほど、予知できないですよね?」と。
そうすると、サイード先生はニヤっと笑いながら、こう答えました。
「菅野さん、なかなか良い質問ですね。当時から社会はそんなに0(ハラーム)と1(ハラール)で割り切れるほど、クリーンではありませんでしたし、毎年いろんな新しいものや出来事が生まれ続けています。
今回の話をまとめると、「ハラール」以外に「ハラーム」「シュブハ」という言葉の存在と意味を知ることで、理解いただけたのではないでしょうか?
- ハラール:100%ルール上OKなもの
- シュブハ:ハラールともハラームとも言えないグレーゾーン(疑わしいもの)よくわからないので出来るだけさけたほうがいいもの
- ハラーム:100%ルール上NGなもの、アウト(避けないといけない)
ハラールについて動画で詳しく解説!
こちらの動画では、ハラールの概要と日本企業がムスリム世界でビジネスをスタートする上で必要最低限の情報をお伝えしています。これからハラールについて詳しくなりたい方やビジネスでハラール認証の取得を考えている方はぜひご覧ください。
HBO編集部ではハラール業界の様々なパートナーシップを通じて、このネット上にはびこる情報と現実のハラール市場のギャップを埋めたいと常々考えており、今回から3回にわたって「3分で理解できるハラールビジネス」と題し、ムスリムでもハラールのプロでもない一般の日本人にとって一番わかりやすい形で説明を行ってくれる著者に執筆を依頼した。
今回の著者菅野氏はムスリムでもない一般的な日本人で、海外ビジネスに特化して20年という経歴を持つ。現在はIslamic Food Consultingの代表として、ハラール認証を取得した日本製品を海外市場に販売する「実販路」の提案を行える、日本ハラール市場でも数少ない実弾(ビジネスに繋がる手段)の持主である。
※【関連記事】ハラール認証の取得は難しくない【3分で完全理解】
ライター「ハラール」や「ハラル」という言葉を日本でも耳にするようになってきました。
ネットで調べても「ハラール認証を取りましょう」とか、「オリンピックに向けてハラールが熱い」といった、広告めいたものが大半か、もしくはイスラム教について長々と説明された、難解な宗教的翻訳文が多くを占めているのが現状です。
今回はハラール(ハラル)とは何なのか、Islamic Food Consultingの代表:菅野氏にわかりやすくまとめていただきました。プロフィール
菅野幸介氏(Islamic Food Consulting代表)
菅野氏経歴:日系大手電機メーカーのエンジニア、上場経営コンサルティング会社の中国支社立上げ及び日本企業の海外支社業績Up支援などを経た後、熊本にある通販系高級基礎化粧品のグローバル事業責任者として「熊本に居ながら世界に売る」手法を洗練する中でハラールと出会う。認証取得に立ち会わなかった為、当初のハラール認証に対する印象は「懐疑的」でしかなく、認証団体も詐欺のようなものだと捉えていたが、ハラール市場についての展望と具体的展開手法を認証団体理事と質疑応答する中で、ハラールという市場性を確信し、独立を決意、「日本ハラール商品を海外市場に売る」事に特化したIslamic Food Consultingの代表に就任、現在に至る。
シンガポール・中国・バーレーン・オマーン等のハラール市場バイヤーとの直接取引の他、自身が顧問を務める西千葉モスク1階のハラールショップ「SALAM117」の経営を1か月で劇的改善させ、売上5倍+黒字化達成に導くなど、机上の空論ではない実弾と実績をベースにしたアドバイスは認証取得後の日本企業からも定評がある。