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マレーシアは名実ともに世界ハラール市場を支えてきた実力国である。
国をあげて構築してきたハラール認証制度「JAKIM」は日本でも聞いた事がある方は多いのではないだろうか。
今回はそんなハラール先進国「マレーシア」の展望と課題をまとめた。
マレーシアがハラール先進国と言われる理由
マレーシアHDCの調査によると、世界ハラール食品市場は2025年7,396億ドル(約76兆円)に達する見込みである。
もともとムスリム人口がマレーシアより圧倒的に多い隣国インドネシアも、マレーシアのJAKIMの成功を受け、急ピッチで政府主体のインドネシアハラール認証制度を創り上げようとしている。
しかし、マレーシアは経済大国とは言えないポジションにある事から、色々な成長の道を模索しつつ、ハラール市場での地位を確固たるものとして継続する方法を絶えず探している。
2019年のマレーシアのハラール経済状況と課題
2019年、マレーシアのハラール経済状況と課題をまとめた。
輸出の伸び悩み
ハラール市場トップランナーであるマレーシアは、近年ハラール商品・サービスの輸出が停滞している。
2018年度のレポートによると、ハラール関連商品・サービスの総輸出額は400億リンギット(約1兆円)と相変わらず規模は大きいものの、前年度から比べると7.6%の減少となっていた。
伸び悩みの原因
減少の大きな原因としては、パーム油(50%減)および化学工業(36.7%減)の2つであった。
化粧品およびパーソナルケア部門では輸出額の増加が見られた。
マレーシアのハラール商品・サービスの主な輸出先は以下のようになっている。
- 1位:シンガポール (約1,233億円)
- 2位:中国 (約1,200億円)
- 3位:日本 (約670億円)
- 4位:アメリカ (約640億円)
- 5位:インドネシア (約510億円)
マレーシア輸出額減少の原因としては、ASEAN近隣諸国のハラール産業への積極的参入と、価格的優位性を持つインドネシアの成長だと考察されている。
インドネシアは本来品質面でマレーシアに劣ると考えられていたが、近年は日本企業や中国企業との技術・資本提携が進み、グローバル市場に対応可能な生産・品質管理体制を持つ企業が増えてきている。
加えて、インドネシア製品の価格優位性がある事が原因と考えられる。
UAEの追随
世界イスラム経済レポート2018・2019によると、長年トップであったマレーシアと、2位UAEのイスラム経済における差が狭まりつつある事が示されている。
マレーシアはイスラム金融エコシステムでの優位性を持ち、リードをしているものの、UAEは食品・旅行・ファッション・メディア・医薬品化粧品の5分野で1位を獲得した。
ドバイは2013年にイスラム経済における戦略を立上げてから約5年で、世界イスラム経済への貢献度を8.3%にまで押し上げ、GDPでも90億ドル(約1兆円)を生み出している。
またUAEの成長の背景としてとして、イスラム銀行業務での成功が挙げられる。SUKUKと呼ばれるイスラム債権や、SUKUK型保険・証券の成長が大きな原因とされている。
この分野での資産価値は2.4兆ドル(約2,600億円)に達しており、2023年には3.8兆ドル(約4,100億円)を越える見込みとなっている。
親米派から親中派へ
マレーシアは経済的な成長を狙い、中国とのパートナーシップを強調する場面が2019年も多くみられた。2019年4月3日-6日の日程で開催されたアジア最大のハラール展示会、MIHAS(Malaysia International Halal Showcase)においても、それは顕著であった。
マレーシア輸出促進機構MATRADE(Malaysia External Trade Development Corporation)のCEOであるDatuk Wan Latiff Wan Musa氏は、米中貿易摩擦が危惧される中、MIHAS展示会に中国からは22社が出展し、海外からの出展者でタイ(29社)、韓国(26社)に次いで3番目に多い国であることを明かし、下記のコメントを発表した。
「中国からの出展数は常にMIHASの上位であり、米中貿易摩擦についてネガティブに考える必要はない。アメリカから25%の関税を受け影響を受けた中国企業に対して、マレーシア市場はいつでも代替手段を用意している。」
今後の展望
MIHASの出展企業約1000社のうち6割超がマレーシア地元の飲食品企業であるが、展示会の知名度も向上していることから、アジアのハラール市場に興味を持つ海外企業の出展は近年ますます増加傾向にある。
日本からの出展は2018年はわずか5社であったが、MATRADEとJETROの共同でのハラール産業促進への取組みの結果、2019年には13社へと増加した。
中国の米国との貿易摩擦というアクシデントを受け、マレーシアはこれを機に中国との結びつきを強化し、輸出入ともに活発化させる狙いだ。
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