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女性を排除するハラールビジネスのリスク

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マレーシアのクアラルンプールで化粧品を買う女性。

本記事の原文は医学博士でカナダを拠点とするTuesday in Love Halal Nail Polish and Cosmetics社のCEO、Umar Dar, MD氏の文章である。
イギリスを拠点とするSSHC LTD(Simply Sharia Human Capital)社のマーケティングディレクター、 Nyra Mahmood氏による共同設計・監修のもと行われた、SSHC社は2016年の報告書『Women in Islamic Finance & Islamic Economy』の出版元である。

イスラム歴において女性がもたらした貢献

イスラムの歴史は、女性が社会にもたらしてきた数え切れない貢献について私たちに教えてくれる。
預言者ムハンマドの最も古い記録からは、家庭にとどまらず、ビジネス・政治・医療・様々なエンジニアリングの場でも女性が活躍していたことが分かる。

女性による助言の価値

さらに具体的に言えば、女性による助言の価値は、さまざまな場において夫の相談に乗った預言者の妻たちが手本を示すことによってムスリムに教えられた。
しかし、2020年になり情報やテクノロジーが豊富でコミュニケーションが当たり前になった現代においても、様々なイスラム組織内の審議や意思決定の過程において女性が排除され、彼女らの助言が看過されている事が未だに多いことは驚くべきことだ。

審議すべきひとつが、ハラール認証である。北米ではハラール認証機関の諮問委員会のメンバー男女比は、男性が圧倒的に女性を上回る。
これは、代表権の平等という面で問題があるだけでなく、経済的にも社会的利益の観点からも、最も愚かな過ちのひとつである。

財布の紐を握るのは女性

マネーが世界を動かすこの社会において、この強力なマネーを制御しているのは家庭において基本的に女性である。
平均的な一家庭あたりの購買力は、過去10年間で世帯収入に女性の働きが加わったことでほぼ2倍に増加した。

世界の労働人口に占める女性の割合が増えるにしたがい、小売業のほぼすべてのカテゴリーにおいて、家庭内の購買の意思決定はますます女性が行うようになってきた。
不動産・自家用車・休暇・食品・家電・個人的な服飾品やインテリアに至るまで、ほぼあらゆる側面において購買の意思決定を女性が支配するようになった。
多くの場合、家族一人ひとりのニーズを最もよく理解しているのが女性だからだ。

多くの企業は女性のニーズに合わせて製品や広告キャンペーンを作り出し、女性にとってより良い購買体験を生み出すことを中心に据えてデザインや生産プロセスを組み立ててきた。色・パッケージ・サイズ・価格・使いやすさ・総合的な価値などの不確定要素はすべて、女性客のアドバイスやニーズのみに基づいて変更され、仕上げられている。

ハラール産業が女性を見落とした原因

ではなぜハラール産業はマーケットの基本要素である重要な購買層である女性を見落としてしまったのだろうか?

ハラール食品・化粧品・銀行・その他ハラール認証が必要なその他の分野において女性が主要消費者であるとすれば、このプロセスの正式な骨組み作りの段階から女性に参加してもらう方が良いに決まっている。

経済的観点からすると、ハラール認証が必要な製品には必ずその分のコストが加わり、最終的にこの追加コストは消費者が支払うことになる。
そのため、このコストが消費者にどんな影響を与えるのかを理解することは、最終製品の総合的なクオリティーを損ねることなくハラール認証プロセスを合理化する上で重要となる。

しかし全ての消費者は平等や同じ立場ではないのも現実である。
ムスリム女性の中にはキャリアウーマン・専業主婦の母親・働く母親・シングルマザー・あるいはその組み合わせなど、様々な立場がある。
そのためこうした立場の違いによって、ハラール製品の価値に対する受け取り方も異なってくる。

例えば、働く女性は放し飼いで抗生物質不使用オーガニックハラール肉を好み、高い金額を支払ってでもそうした選択をするかもしれない。

しかし、ふたつの仕事を掛け持ちしながら三人の子どもを育てるシングルマザーの場合は、高い金額を支払う余裕はなく、ある程度の品質水準を満たしているハラール肉を必要としているかもしれない。
ハラール認証が価格の幅に対応する余地がなければ、低所得者には手が出ず、利用ができないケースが出てくるだろう。

以上はハラール認証業者が考慮すべき問題の一例に過ぎない。今後生じる可能性がある問題や、明らかになっていない問題はまだたくさんある。

マニキュアのハラール基準

Tuesday in Love社でマニキュアを作ったとき、マニキュアのハラール基準において、競合ブランドは「通気性」を設定したが、当社では個人的な経験から完全な透水性を設定した。
通気性を設定したマニキュアはウドゥの目的では役に立たないということは、その機能性の科学について何人もの学者に説明するまで、一般にはなかなか理解してもらえなかった。

しかし多くのイマームやイスラム学者はいまだその違いに気付いておらず、その意味を十分に理解しないまま認証を与えようとしているようだ。

これも、ほとんどの男性がマニキュアをしないためこの技術がどれほど女性に役立つか分かっていないという表れだと考えられる。

これらの例からも、ハラール認証プロセスに女性がより多く参加する事で非常に有益となる可能性が多い事がわかるだろう。
彼女らはデザインの機能性を評価するだけでなく、化粧品への理解に基づき洞察力に富んだ反対意見や質問を提起することで、化粧品ブランドは自らの主張を裏付ける確かな証拠を用意せざるを得なくなるからだ。

また、女性は化粧品やマニキュアなどの製品が、精神面にいかに有益な作用を及ぼすかをよりよく理解している。
Tuesday in Love社がようやく彼女たちが利用できるマニキュアを作ったことを知って大喜びしたと言ってくれた女性は数え切れない。また、私たちの家族の女性がイスラム教に改宗し、ハラール化粧品シリーズを発見したときの幸せは、ハラール化粧品を提供する会社にとってはとりわけ大切なものだ。

なぜなら、彼女たちはイスラム教に改宗以前大好きだったそれらのものを永遠にあきらめねばならないと思っていたからだ。

女性をターゲットにしたハラールビジネスは伸びしろだらけ

ハラール認証委員会で女性委員の数が不足しているというジレンマに対する解決法は、とてもシンプルかもしれない。これはコミュニケーションの問題なのだ。

各分野で傑出した才能を持つムスリム女性の数は、当たり前の話だが無数にいる。
我々の社会には、ボタンを押しさえすれば連絡を取ることができる優れた才能の持ち主(女性)があふれている。

Ustadha Ieasha Prime氏やSaara Sabbagh氏などのイスラム学者、Linda Sarsour氏やMalala Yousafzai氏などの政治活動家、Ibtihaj Muhammad氏(フェンシングのオリンピック金メダリスト)やKubra Dagli氏(テコンドー世界チャンピオン)などのプロアスリート、Laila Alawa氏(The Tempest編集長)やAmani al-Khatahtbeh氏(Muslimgirl編集長)などのメディア界の有力者、Anousheh Ansari氏(イラン生まれのムスリム宇宙飛行士)などの科学者やエンジニアたちは、私たちのコミュニティーにとって巨大な宝となっている女性たちの氷山の一角にすぎない。

男性のイスラム学者はただこうした人々に連絡を取り、委員会に参加して貴重な洞察やフィードバックを共有してもらえるよう、彼女らに相応しい敬意を持って頼めばいいだけだ。

よく組織化され、経済的にも機能するハラール認証機関を構築するためのプロセスは、容易な道のりではない。

コストや慣習、法律、利用しやすさなど、数え切れないほどの不確定要素がある中で、全ての関係者が満足できるように、バランスを取ったり戦略的な駆け引きを行う試みは難易度が高いのは当然である。
しかしどのような戦略ゲームにおいても、一番成功を収めるのは、もっとも強力な駒であるクイーンに頼りうまく活用する者だ。


< Sigamp’s Eye >
編集者解説:女性の平等についてイスラム社会でも未だにこういった声が上がるという事は、まだ女性の立場が低い国や場面が多い、という事の表れでもある。日本でも完全に男女平等という事は誇れる状態ではないと思うが、かたやお隣の国、中国はどうなのか、意外と知らない日本人は多い。中国は(一部の男尊女卑独自文化を築いた地域を除き)全体的に見て男性は女性を尊重する事を自分の両親から叩き込まれている。そのため、若者も含めて女性を尊重する事にかけては、イタリア人よりも得意かも知れない。現代の中国がどのように女性主体社会を実現しているかは、実際に現地で見たほうが理解は早いだろう。彼らの口癖は、「女性が幸せじゃない社会に未来はあるのか?」。

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