ハラール食品市場は世界中で急拡大している。
そして、首位を争う主要生産国は、
- ブラジル
- オーストラリア
- タイ
といった非ムスリム国である。
2020年東京オリンピックにハラール食品提供予定のマレーシアMyChefなど、ムスリム国の中にはこの流れを変えようとしている企業もある。
ムスリム国企業が動き出す
マレーシアは今回のオリンピックを、ハラール製品輸出を伸ばすきっかけにしたいと考えている。
かつてハラール食品は、ムスリム諸国以外ではなかなか手に入らないニッチ市場のものだったが、現在は急速にその需要が広まっている。
イスラム教の食事法に則った伝統的な料理を提供する屋台やレストランが世界中の至るところに出現している。
ところが、こうした急速な市場拡大の恩恵を受けている国を見ると、ほとんどがムスリム国(イスラム教徒が多数を占める国)ではない。
ハラール肉を供給している世界Top10のうち8か国は、ブラジルやオーストラリアなど、ムスリム人口の少ない国となっている。ニュージーランドも、ハラール牛肉の主要輸出国となっている。
しかし現在、ムスリム国の企業がこの市場でより大きなシェアを獲得しようと動き出している。
マレーシアは東京オリンピックに向けて強化
マレーシアの食品企業MyChefは、チャーハンやチキンビリヤニなどのインスタントハラール食品の生産を強化しており、東京オリンピックに間に合うよう、日本に向けて出荷の準備を行なっている。また商品ラインナップも強化している。
マレーシアは、東京オリンピック期間中にハラール食品を提供するほぼ唯一の国となっている。(※2021年開催延期に向け、この状況は変化する可能性がある。)
コロナウイルス流行前、日本は2020年訪日観光客が過去最高の4,000万人に達すると期待していた。マレーシアもこのうち800万人がムスリムと見積もっていた。
MyChefマネージングディレクター、Ahmad Husaini Hassan氏は下記のようにコメントした。
「この東京オリンピックの需要に向け、当社ではHalal Malaysiaに限らず、Halal International Cuisineのハラール製品を開発し販売を開始した。弊社はマレーシア製のハラール食品を提供してきたが、マレーシアで製造したものであっても、日本にいる・または日本を訪れるあらゆる国の人々のニーズに対応する」
Ahmad Husaini Hassan氏は、オリンピックの選手村にある自動販売機・スーパーマーケット・売店で、容器入りのハラール食品を販売したいと考えている。
Ahmad Husaini Hassan氏は、オリンピックをハラール製品の輸出を伸ばすきっかけにしたいと言う。オリンピックでの様子を見るだけではなく、進出するからにはそのまま長期的に日本市場に残ることを考えていると。
マレーシア人ムスリムAmir Hadi Azmi氏は、下記のように述べた。
「マレーシア人ムスリムとして、旅行が好きな私はいつ旅行へ出てもハラール食品が手に入るということはとても嬉しい事だ。旅行全体がずっと楽になる。ハラール食品に関しての各国の状況は、以前よりも随分良くなった」
ボスニアも東京オリンピックを契機と捉えている
オリンピックの恩恵を求めて競い合うもうひとつのムスリム国はボスニアヘルツェゴビナ。
人口の約半数がムスリムである。
この東南ヨーロッパの国では、毎年3日間ハラール食品に特化したフェアを首都サラエボで開催している。これは、国内外のムスリムを引き付ける試みだ。
食品品質の専門家、Hamid Kurjakovic氏は下記のように述べている。
「ここ10年ほど、ボスニアヘルツェゴビナを訪れる中東観光客が増えているようだ。そのため多くのレストランがハラール食品のメニューを提供し始めている」
ムスリムにとって、温かいハラール料理が食べられる場所が増えれば、旅行の機会は広がる。
< Sigamp’s Eye >
編集者解説:コロナショックで多くの日本企業が売上減に悩む中、実は在日ムスリム向けのビジネスは影響が最も少ない事が関係者からの情報で判明している。特にハラール食品の販売はラマダン(4月末―5月末の1か月間)中という事もあり、現在もハラール食品を扱うスーパーにはムスリム顧客が絶えず毎日訪れる。日本企業の新規事業開拓としてこれだけ心強い分野は無いのではないだろうか。HBO編集部ではハラール事業に参入したい企業のお問合せを随時受付中。