国際ハラール業界では、マレーシアJAKIM、インドネシアBPJPHとMUI、UAEのESMAなどの主要ハラール関連団体のことは良く知られている。
シンガポールはこの中でユニークな存在である。ムスリム主要国ではないのに、政府団体MUIS(Islamic Religious Council of Singapore)がハラール基準の指定と認証を行なっている。現在MUIS関連団体が、シンガポールのハラール基準と良質の統治モデルを後ろ盾として、そのハラール専門知識とサービスの海外提供を目指している。
Warees LimitedのCEO、Dewi Hartaty Suratty氏に話を聞いた。
Q1:Warees Limitedは、MUIS(Islamic Religious Council of Singapore)がハラール技能開発プログラムと国際認証を認可している唯一の機関であるが、これはシンガポールには他にそのような団体がなくWareesがオンリーワンなのだろうか。
A1: Warees(Warees Limited)は、シンガポールMUISハラール基準に基づき国際認証と認証関連の研修プログラムを運営している。監査役や指導者はWareesまたはMUISハラール職員など、MUISグループの職員が担当する。
シンガポールでは、製品開発・マーケティング・ハラール製品輸出など、他のハラール関連プログラムの研修を提供する団体もある。Warees発行するもの以外では、MUISはシンガポールへ輸出する製品を承認する、複数の海外ハラール認証団体を認可している。
Q2:19年12月に、Wareesは日本のJTBと、ハラール関連食品と観光サービスの分野で協力すると発表した。Wareesの顧客のうちどの程度がシンガポール国外企業なのか。
A2: Wareesのハラール認証顧客はすべてシンガポール国外の企業。WareesはシンガポールのMUISハラール基準に基づいてサービスを提供している。
Q3:JTB以外に、Wareesはどのような海外企業や機関と業務を行っているのか。
A3: このサービスの一つの目的は、海外企業がシンガポールおよび他の国々へ商品を輸出できるよう認証を手助けすることだ。Wareesは、研修・監査・ハラール認証の発行運営を通して専門的支援を提供する。我々のパートナーは、Wareesと将来的顧客との橋渡しの役割を果たす。
Q4:Wareesはどの地域へのサービス提供をメインだと考えているか。
A4:東アジア(中国・韓国・日本など)とヨーロッパ(イタリア・ベルギーなど)にサービスを提供している。
Q5. シンガポールのハラール市場は小さく、ハラール界の大物、インドネシアとマレーシアに囲まれており、その両国ともにハラール認証・顧問サービス・ポートフォリオを持っている。シンガポール拠点のWareesの有利点は何か。
A5: Wareesの存在意義は、シンガポールMUISハラール基準実施の手助けをし、ムスリム社会に役立つことだ。MUISはシンガポールの規制団体であり、企業の関連技能開発のためにサービスを提供し、業界の「補助役」を果たす。
有利な点は、ハラール食品業界と認証に関する職員の幅広い知識により、その役割を効果的に果たせることだ。
中国のような海外市場におけるプレゼンスも、シンガポール企業がその商品の輸入先を多様化することにつながり、ムスリム社会のより幅広いハラール認証商品へのアクセスにつながる。シンガポールは食料の90%を輸入しているので、国際認証における我々の活動は、シンガポール在住、またシンガポールを訪れるムスリムに持続可能なハラール食品の供給を確保するために役立つ。
政府に関わる企業として、WareesはSingapore MUISハラール基準に基づいて認証を提供している。MUIS基準は認知度が高く、ムスリム少数派国の文脈に沿ったものだ。我々は、これらの要素は非ムスリム国の食品製造業者にもアピールできる点だと考える。我々の経験と専門知識は、シンガポール地元および海外企業にとって最高のパートナーとなるにふさわしいと考える。
Q6: シンガポールはOIC(Organisation of Islamic Cooperation )に属していないので、OIC内のSMIIC(Standards and Metrology Institute for the Islamic Countries)にも属していない。しかしMUISはマレーシアが進めるIHAB(International Halal Authority Boar)を通した国際的なアジェンダには参加している。Wareesは、業界が直面する課題や問題に関するハラールをめぐる国際的な議論にはどのように寄与しているのか。
A6: 業界の促進役として我々は、政府機関・貿易協会・企業などの業界関係者に意見やベスト・プラクティスを共有したりネットワークを構築したりするためのプラットフォーム・機会を提供するためMUISと緊密に協力している。そのようなイニシアチブの一つに、WareesがFDA-Food & Bevarageとともに組織しているHalal Theatreの開催がある。これにより、ハラール認証団体・貿易奨励団体・企業をF&Bのエコシステムに取り入れることができる。
Q7: 世界への展開とは別に地元シンガポールでWareesはハラール業界の成長のためにどのような貢献をしているのか。
A7: シンガポールでは教室・オンライン研修・ワークショップ・セミナーなどを通して企業に能力開発プログラムを提供している。
シンガポールで持続可能なハラール・エコシステムを構築するためには、生産労働者であれ、品質管理部長であれ、企業オーナーであれ、みなが大事な役割を果たすと考えている。したがって、我々の使命は、MUISと協力してハラール基準を守り、シンガポールのハラールへの信頼を確立できる有能なハラールのプロフェッショナルを育てることだ。
Q8: シンガポールは、管理の行き届いた豊かで効率的な先進国家として称賛されている。Wareesはどのようにシンガポール全体の政治・ビジネス・経済環境の良い特徴を反映しているのか。
A9: Wareesは非公開有限責任保証非営利企業であり、すべての事業をシンガポールのために、つまりシンガポール全体および地元企業の利益になるような持続可能ハラール産業の確立を目的としている。
それに加え政府団体も地元企業の海外展開を支援している。Wareesはシンガポール地元企業が海外ハラール市場へ参入し輸出する時、また海外のパートナーと商取引をするときに重要な検討事項についてのへのガイダンス提供を通して、政府の取り組みを援助している。
Q9: Wareesは国際的なハラール業界、そしてムスリム経済を推進するためにどのようにシンガポールの長所を使っているのか。
A9: Wareesが順守しているシンガポールMUISハラール基準は国際的認知度の高い一流の基準である。シンガポールの能力と整合性は評価が高いため、我々の活動と専門知識に対して国際的な場で信頼を得ることができている。また、Enterprise Singaporeのような政府機関とも緊密に協力し、政府の戦略アジェンダに沿った形で活動を進めるよう努めている。
Q10: 2020年、Wareesはどのような活動を展開する予定か?
A10: 2020年はハラール業界関係者の様々なニーズに応えるため、研修プログラムの範囲をますます拡張していきたい。またハラール業界の企業に役立つために様々なパートナーとの連携を強化していく予定だ。
< Sigamp’s Eye >
編集者解説:非ムスリム国であるシンガポールのハラール認証MUISは歴史が古く、認知度の上でも実はJAKIMやMUIに劣らない。また自国食品の多くを輸入に頼ることもあり、より多くの食品輸入選択肢を作る上でも、自国ハラール基準に対応した海外企業の食品を増やしていきたい思惑がある。1月の日本ハラール食品シンガポールスーパー販売でも感じたが、ハラールに対応しておけば、ムスリム以外の現地欧米駐在員・旅行者や中華系の住民も買ってくれる。ハラールはもはやムスリム限定ではないターゲットを持っている。
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