ビジネス

エジプト:数億円規模の輸入ハラール肉認証ビジネスの独占(上)

  • LINEで送る
halal

halal

エジプトでは、輸入肉はすべてハラール認証が必要となる。つまり、調達から保管、配送に至るまでイスラム法に従って行われる必要がある。このハラール認証取得が、収益性の高いエジプト市場に肉業者が参入するための必須条件となっている。

エジプト政府は、食肉処理場輸出工程のハラール要件準拠保証を業務とする、世界各国の認証団体にライセンスを供与している。アメリカに拠点を置くある食肉輸出業者によると、認証ルールは数え切れぬほどあり内容も複雑だが、それでもまだ耐えられる範囲であり、エジプト輸出に際してトラブルが生じたことは一度もなかったと言う。

しかしそれは2019年の5月までのことで、新しく認可されたIS EG Halal Certified社を除くアメリカ国内の全ハラール認証団体の資格をエジプト農業省が突然取消した。さらに2019年10月には、エジプトが輸入する食肉主要産地である南米においても、エジプト農業省が同社に独占権を与えた。

アメリカ農務省の海外農業局カイロ事務所によると、ブラジルはエジプトに2018年:171,000トンの冷凍牛肉を輸出しており、エジプトへの最大牛肉輸出国となっている。一方アメリカは牛のレバーや内臓をエジプトに供給しており、2018年の輸出量は62,200トンとなっている。

IS EG社は、輸出入業者・外国政府など多くの市場関係者にとって未知の存在である。アメリカ農務省の海外農業局カイロ事務所5月報告書によると、同社は2017年11月に設立された非政府企業であり、ハラール認証の経験もアメリカの牛肉業界との関連もなかった。また、IS EG社はエジプト農業省による決定直後に運営を開始したばかりだと言う。

独占認証団体となった数日後、同社が最初に手掛けた業務は、北米への認証料金引き上げである。Mada Masrが行った計算によると、これにより数億円の追加収入が発生している。エジプト市場におけるアメリカ産牛レバーの価格はこの動きを受けて1kg当たり13エジプトポンド(約90円)ほど値上がりした。

Mada Masrの調査によると、IS EG社は「ソブリン・エンティティー」(政府の上級セキュリティー機関)と関連のある別の民間企業と共に事業を行っている。この2社で、エジプト輸入牛肉認証という数億円規模のビジネスを独占しているのである。

元畜産サービス総合局検疫部長(General Authority for Veterinary Services’s quarantine department)のYousef Shalaby氏によると、認証企業は輸出国食肉業者に対し、イスラム法に準拠した牛の食肉処理サービスを提供する。

エジプト農業省の委員会は、輸出国におけるエジプト基準遵守とエジプト大使館への登録を徹底するために、海外の食肉処理場を定期的に訪問している。エジプト標準化・品質管理機構(Egyptian Organization for Standardization and Quality)によると、こうした定期的な監査によって、承認または正当な理由に基づく申請却下、あるいは承認待ちの原因となっている慣行の是正に向けた勧告などが結果として生まれる。

アメリカや南米の食肉輸出業者はこれまでの数十年間、地元の数多くあった認証企業と問題なく取引してきたため、経験のない新会社が以前のなじみの認証企業を全て排除するとした今回の決定は、彼らにとっても衝撃であった。

アメリカ農務省は、アメリカにある認証団体7社が説明なしに資格停止・却下され、新たにIS EG社が唯一資格のある企業となる旨の通知を畜産サービス総合局より受け取ったと述べた。

南米の認証団体にも同じことが起きた。ブラジル牛肉輸出協会(Brazilian Beef Exporters Association)の会長であるSergio Remeles氏によると、ひとつの企業が南米唯一のハラール認証団体となった理由について、エジプト農業省はやはり何の根拠も示していない。

唯一のハラール認証団体になったIS EG社が即座に認証サービス料金を法外に引き上げたと、既に同社と数回取引を行った食肉輸入業者、Sherif Ashour氏は言う。コンテナ1台当たり(27トン)の認証料金が、アメリカでは200ドル(約22,000円)から5,000(約55万円)ドル以上に、南米でも250ドル(約27,000円)から1,500ドル(約17万円)へと跳ね上がったのだ。

多くのハラール認証団体が契約解消された経緯は一方的かつ唐突だったようだ。

資格を取り消されたある認証団体の幹部によると、2019年上旬に抜き打ち監査の対象となる旨の通知を受け取った。このことは10年にわたる同社の事業の中で前例がなく、苦情がなかったことを考えても全く予想外のことだったと言う。他の認証団体も同様に抜き打ち監査対象となっていた。

エジプト農業省の別の部署の職員も監査のためにアメリカの企業を訪れており、エジプト以外の国との取引を含む事業活動に関する大量の資料の提出を要求したという。根拠のない要求だったが、同社はそれに応じた。同職員らは現地にいる間、ほとんど説明もないまま7時間かけて調査や資料のコピーなどを行った。数ヶ月後、同社は正当な理由もなく資格を取り消された。

その他数社の認証団体は、政府が決定を覆すことへの期待から、この問題に関するコメントを控えた。

エジプト農業省の広報担当官Mohamed El Kersh氏および畜産協会の検疫課責任者Ahmed Abdel Karim氏はコメントしていない。

この問題に関するAhmed Abdel Karim氏の唯一のコメントは、10月に地元の報道機関に対して語ったときのもので、認証団体を選ぶ際のルールや手続きはエジプト国内の問題であると述べている。また、畜産検疫部は地元市場のニーズについてより良く理解しており他国には異議を唱える権利はない、と彼は述べた。

<エジプト:数億円規模の輸入ハラール肉認証ビジネスの独占(下)に続く>

< Sigamp’s Eye >
編集者解説:ハラール市場で最も消費が大きい肉類。エジプトにおいてもその多くを輸入に頼っており、アメリカやブラジルがしのぎを削る中、エジプト側による突然の一方的な「通告」という事件。この取引がどれだけエジプト市場で儲かるか、という指標ともいえる。日本企業は「ルール」というとクリーンな印象を持っていると思うが、世界ではこのように勝手なルール変更が日常茶飯事に行われている。一寸先は闇か光かどうかは、やり続けていかないと事前検討しても意味がないともいえる。

関連記事:

エジプト:数億円規模の輸入ハラール肉認証ビジネスの独占(下)