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イギリス: ハラールフード配達Pront Eat、運営停止へ

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HalalEat and Pronto Eat
HalalEat and Pronto Eat

HalalEat社とPronto Eat社の共同設立者、Musa Ahmed氏とAbul Rob氏。
写真:HalalEat社

イギリス初のハラールフード・デリバリーサービスHalalEat社を引き継いだPronto Eat社は、スマホアプリを市場にリリースする前に正式に運営を停止した。

イギリスのCompanies Houseの記録によると、2018年4月に法人登録し、11月に営業停止を申請、2019年1月2日に企業登記簿からの削除を申請している。その後同社は共同設立者Musa Ahmed氏とAbul Rob氏による終了報告書を配布した。

Abul Rob氏は投資の不安定さの主要な理由の一つとしてブレグジット(イギリスの脱EU)を挙げた。
「2019年は私たちにとって厳しい年だった。投資家たちは成り行きを静観する態度をとった。ブレグジットによってイギリスが深刻な不景気に陥るかもしれないという不安のためだ。」

Pronto Eat社は、2018年に単独投資家Main Ali氏が当時3年目だったHalalEat社を買収したことに伴って設立された。Abul Rob氏は、このベンチャー企業はフード・デリバリー、自社ブランドのインスタント食品、ハラールフードのレストランを取り上げるユーザ主導型消費者ブログなどの主要ビジネスを拡張する「より完全な提案」になると当時話していた。

投資家たちはPronto Eatアプリ完成に必要な資本を出し渋ったという。共同設立者のAbul Rob氏・Musa Ahmed氏・主要出資者のMain Ali氏以外のPronto Eat社株主は、2019年1月のCompanies Houseの記録では、Sakina Syed氏・Nomaan Baig氏・ Ali Hassan Syed氏・ Mohammed Mokoddus氏・Thoai Nguyen氏などであった。

Abul Rob氏はPronto Eat社のような新興企業への投資について下記のようにコメントした。
「加速(市場成長)と減速(企業母体削減)を同時には行えない。食品関連のアプリの重要なパフォーマンス指標は、投資家が利益が上がるまで10年以上待つ傾向にある。2001年起業で2014年上場したJust Eat社のように。また、良い売上数字は出せたとしても、だからといって利益になるとは限らない。

対話の中で、投資家たちはこのサービスを気に入り、投資に前向であったが、結果として大きな投資にはつながらなかった。資本を求めてレストラン業界にもパートナー企業を探したが、誰も言葉を行動に移さなかった。彼らは投資する気はあったが、当方で受け入れられるようなオファーでは無かったり、株を要求されたりした。」と彼は話した。

投資家からの中途半端な反応を受けて、Pronto Eat社は他の方法で資金調達を試みたが、それでも操業を続ける助けにはならなかった。

「WhatsAppを使って人々に資金提供を求める状況になって、個人のクレジットカードを利用したり、金融機関からの企業向けローンも使い尽くした。出来ることは全て試した。2019年7月には別の仕事につき、2019年7月から11月まではその給料を使って支払いを続けていた」とAbul Rob氏は話した。

特定の市場条件も、Pronto Eat社にとって利益になりづらい状況を作り出していた。
特に、Abul Rob氏はアプリ開発に資金をかけながらも、予算の大きな一部を顧客獲得に使う必要があったことを指摘した。
「初めは、顧客獲得のためにユーザーに対してキャンペーンを張る必要があり、食事を安く提供する必要があった。例えば3ポンド(約420円)の手数料をとっていたとしても、5ポンド(約710円)のクーポンを提供していたので、収支は悪化する。しかし、このようなクーポンを提供する以外に競争力を上げる方法がなかった。」

これら全ての要素が組み合わさり、Pront Eat社はDeliveroo社やUber Eats社などのより大規模なライバルに対抗できなくなった。
「大手競合はすべて、起爆剤となる資金とマンパワーをより多く持っていた。アプリの開発段階で、私たちは1.5-2名のエンジニアで取組んでいた。Deliveroo社にはイギリスに300名近いエンジニアがいた」とAbul Rob氏は話した。

重要な投資家

振り返ってみると、もっと投資家の選択を改善できたかもしれないとAbul Rob氏は言う。
「気がつくと、書類上は豪華な投資家が揃ったが、紹介すると言いながら実現しない人々に囲まれていた。投資家たちはまず商品に集中すべきだった。初めは完全にネット中心の運営だったが、様々な市場圧力によりいろいろな局面で資金が必要になってきた。運営には最低でも月々25,000ポンド(約356万円)必要だったが、資本がなかったので操業に大きなダメージがあった。その50%にも満たない資金、7,000-8,000ポンド(約100万から114万円)しか無かった。これでは月々のITやランニング・コストをカバーできなかった」

Pronto Eat社がムスリム投資家から支援を得られなかったことを振り返って、Abul Rob氏は、ムスリムのベンチャー・キャピタル投資家はテクノロジー系の新興企業に関してはまだまだだと主張した。
「彼らムスリム投資家は、新たなテクノロジー系の新興企業と、そのような新興企業がどのようにテクノロジー部門に変化をもたらすことができるかについてよく理解していない。ムスリムの投資家は12ヶ月から36ヶ月でリターンを期待する。しかし現実的には、リターンは10年後なのです。即時に利益になるという考えは幻想だ」

Abul Rob氏は、同じくイギリスで活動し、ほとんどの資本を非イスラム系の提供者から獲得している新興企業Muzmatch社の例を挙げた。
「素晴らしいリーダーたちが革新的アイディアを明示しており、素晴らしい商品も生まれている。しかしムスリム投資家からの資金提供が得られない。Muzmatch社のオーナーはアメリカに出向いて、理解してくれる非イスラム教徒の投資家から資金を得る必要があった。Muzmatch社はムスリム社会の中ですでに成功していたにも関わらず、だ。

Muzmatch社は最近、昨年7月にシリコンバレーの投資会社Y CombinatorとニューヨークのLuxor Capital社が主導したシリーズAラウンドで700万ドルの資金を獲得している。依然としてムスリム投資家と消費者にとっては信頼が課題となっている。

Deliveroo社は非イスラム系だが、信頼の要素がある。同様にTesco社に関しては信頼面では全く問題ない。しかし、ムスリムが小規模ビジネスを始めて、資格も全て持っていたとしても、それでも信頼が得られない。ムスリムがムスリムを信頼しないのは、悲しいことだ」とAbul Rob氏は「屈辱的」と見なすPronto Eat社の軌跡を振り返って話した。

「特にテクノロジー分野のムスリム投資家の理解のレベルは金融文化という意味でも、現在の初歩的なレベルから成長する必要がある」とイスラムのポートフォリオにおける不動産などの資本の優勢に言及して話した。

店じまい

Abul Rob氏とMusa Ahmad氏は現在Pronto Eat社のテクノロジーの販売を交渉中である。
Miam Ali氏が現在のインフラを掌握する可能性があるという。
「我々はすでに構築された発表前の技術の販売を検討しているが、交渉はまだ初期段階であり、実際の販売段階になれば、Milan Ali氏が交渉に加わる」

Abul Rob氏はMilan Ali氏を前向きな投資家と考えている。
「Milan Ali氏は大きな助けになってくれている。彼は一時的な資本やつなぎの融資を提供してくれた。しかし、彼ばかりに重荷を背負ってもらう訳にはいかない」

アプリは高度にカスタマイズ化されているものの、Pronto Eats社の顧客データとテクノロジーの残りは全てMilan Ali氏の手に渡るだろうと話した。
「Milan Ali氏はパキスタンを拠点としており、遠隔地から食品関連の新興企業を運営するのは難しい。そのため彼はパキスタンやアジア市場でこのアプリを再始動するかも知れない」

< Sigamp’s Eye >
編集者解説:イギリスにもアフリカ系を含む多くのムスリムが住んでいるが、このフードデリバリーアプリサービスの失敗は、ハラールビジネスというよりは単純に現代のアプリマーケティングに事業計画がマッチしていなかった事が原因ではないだろうか。クーポンによる顧客獲得合戦に参加しながら、エンジニア2人体制で300万円/月のコストが発生するような体力だと、IT先進国の中国に投げる等でコスト削減を図る道もあったのでは、と考えてしまう。配達サービスは国ごとに交通事情も違う為、他国でのローンチにも時間がかかりそうだ。

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