ドバイ拠点の調査会社DinarStandard社が作成したレポート「The State of the Global Islamic Economy Report 2019/20」によると、オーストラリア食品製造業にとってイスラム市場にビジネスチャンスがあると強調している。同レポートでは2018年に全世界のムスリムはハラール食品1.37兆ドル(約152兆円)を消費しており前年比5.1%増、2024年までに年平均成長率(CAGR)6.3%の1.97兆ドル(約217兆円)まで増加すると予測されている。
オーストラリアは、2018年輸出額が78億AUドル(約5,810億円)相当と現在イスラム協力機構(OIC)加盟国へのハラール飲食品輸出で第4位となっている。CAGRが6.3%であることから、輸出額は今後10年間で倍増し、146億AUドル(約1兆円)になると予想される。
国連に次いで世界第2位の国際政府間機関であるOICは、平和と協調の精神のもと世界ムスリムの利益を守ることを目的としている。オーストラリアは2018年にOICに対し31億AUドル(約2,400億円)相当の食肉家畜を輸出しており、ブラジルに次ぐ第2位となっている。またOICに対するオーストラリアの2番目の輸出品目はシリアル(穀物製品)で、19億AUドル(約1,600億円)相当の輸出額となっている。
「ハラール食品の需要がある国は世界52カ国で、全世界の食料支出8兆ドル(約880兆円)のうちムスリムが17%を占めています。2018年-2019年にはハラール食品の生産に対し6.5億ドル(約700億円)が投資された。投資家にとってこれは氷山の一角にすぎない。世界食品大手やその社内ハラール事業部門による、ハラールに対する投資が増加している。世界イスラム経済についてまとめたDinarStandard社のレポートには、食品技術・eコマース・小売などハラール食品関連の多くの興味深い可能性が示されている。オーストラリアにおける牛肉消費が減少する中、ハラール市場は生産者にとって希望の光となっている」とオーストラリアのイスラム退職年金ファンドCrescent WealthのCEO Talal Yassine氏は話した。
ハラール認証食品のオーストラリア国内需要もまた成長中であり、現在年間17億AUドル(約1,266億円)となっている。オーストラリアのムスリム人口は現在50万人で、2050年までに70万人に達すると予想される一方で、2018年に56.5万人のムスリム観光客がオーストラリアを訪れている。DinarStandard社のレポートでは、2018年のオーストラリアにおけるムスリム消費者による総支出額は78億AUドル(約5,808億円)であった。ハラール食品市場の成長機会を認識したWoolworths社は、ムスリム人口の多い地域の20店舗でAl-Sadiqブランドの鶏肉製品販売を開始している。
イスラム経済が高度化するにつれ、ムスリムのオーストラリア人は自分のポリシーに合った消費をますます求めるとTalal Yassine氏は言う。「より多くの人々が自身の価値観に照らし合わせて年金投資を行うようになったため、オーストラリアで唯一健全的な規制あるイスラム退職年金ファンドであるCrescent Wealthは飛躍的な成長を続けている」とTalal Yassine氏は話した。
< Sigamp’s Eye >
編集者解説:ムスリム市場に今やなくてはならない、オーストラリアの肉製品。ハラールはもはや宗教的な得体の知れない何かではなく、れっきとした消費力を伴う1つの巨大市場であることがこのレポートからもわかる。まだわずか50万人程度のムスリム人口であるオーストラリアが世界ハラール市場で輸出第2位を取れるという事は、品質で大きく上回る日本企業にとって(きちんとやる気を持って取り組めば)充分にパイが確保できる可能性を残している。
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