オーストラリア:エシカル・ファッションをめぐる5つの誤解

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オーストラリア:エシカル・ファッションをめぐる5つの誤解

エシカル・ファッション(環境問題・労働問題・社会問題に配慮した良識にかなった素材の選定・購入・生産・販売をしているファッション)が流行しているが、そこにはすぐに誤解を解かないといけない複数のポイントが存在する。

オーストラリアはアパレル世界第2位の消費者である。そして日々50万トン以上のアパレルを埋立地に廃棄している。衣服をたった7回着ただけで捨て、毎年平均27キロの新たな衣服を購入している。

エシカル・ファッション運動はファスト・ファッションの社会と環境に対する甚大な影響の削減を呼びかけている。しかしなぜまだ多くの人々が参加していないのだろうか。

人々を遠ざけている可能性のあるエシカル・ファッションをめぐる5つの誤解について、Clara Vuletich氏の話を聞いた。

1. エシカル・ファッションは特定の店だけで扱われている。

以前は、エシカルファッションといえば小さなブティックを訪れるしかなく、極端にミニマルだったり、逆に極端にカラフルだったりして、着るには勇気がいる選択肢しかなかった。しかし今はエシカル・ファッションがメジャーの流れに入ってきている。

Clara Vuletich氏は、H&MやCountry Roadのような大手ブランドが幅広い業界関係を生かしたユニークな方法でエシカル・ファッションに取り組んでいると話す。ユニクロも中古洋服を返却するよう呼びかけて消費者にリサイクルを促している。このような行動には常に懐疑的なただのPRだというコメントがつきまとうものの、 Clara Vuletich氏は正しい方向への前進として評価している。
「このような大企業で働く人々だってモンスターではない。全員がエゴで動いているわけではなく、もっと複雑だ。H&Mのような大手ブランドが(例えば)上海の主要サプライヤーとの間で数十年かけて育ててきた関係は決して無意味ではない。関係を通してお互いの名前・家族・そして生活を知るようになるからだ」

2. エシカル・ファッションは完全ベジタリアンで、すべて天然でエコである

ナチュラル・エコ・エシカルというキャッチフレーズには気を付けるべきだと Clara Vuletich氏は言う。世界中で最も多く生産されている素材のひとつであるコットン(綿)は、ほとんど必ず殺虫剤や染料などを含む有毒な廃水を出しており、搾取的農業環境に頼っている。

リーバイスによると、デニムのジーンズを一着作るのに2,600リットルの水が必要だという。プラスチックから作った化学繊維であるポリエステルの方が他のどんな天然素材よりもずっと簡単にリサイクルと再利用がしやすい。

しかしポリエステルは分解されるのに200年ほどかかる。埋立地でウールはメタンガスを生成してしまう。どちらの方が環境に良いのだろうか?アパレル生産はとても複雑なので、生地によって環境や持続可能性のランキングを行う事は不可能だ。

3. エシカル・ファッションはローカルである

輸送時の排気ガスを減らすことには意味がある。しかし実際のところ、全ての地域で綿を育てて織物工場を建てない限り、どんな衣服の生産にも部分的には国際的なプロセスが入ってくる。

「メイド・イン・オーストラリア」というタグがついていても必ずしも質の高さと安全な仕事環境が保証されるわけではない。そして「メイド・イン・チャイナ」というタグがもはや今は技量の低さと搾取労働を意味してはいない。

オーストラリアのファッション市場が必要としている質・量・ターンアラウンドのためには、エシカルであろうとなかろうと、国際的なプロセスは残念な副産物ではなく、存在のための必要条件なのだ。生地生産は社会や国家が最も速く貧困から抜け出す方法のひとつであり、突然そのような基盤を突き崩してしまうことが解決とは言えない。

4. エシカル・ファッションは高価である

サプライチェーン全ての労働者が適切な賃金で働いているような衣服を探す場合、商品の値段が高くなるのも無理はない。しかしお金に余裕がなくても、地球や人類を搾取しない洋服の選択肢はある。

Clara Vuletich氏は古着を好む。 Salvos、Vinnies、 U-Turn、 Swop、 Red Cross、Gumtreeなど、古着だからといって安物の粗悪品とは限らない。ファスト・ファッションの大手ブランドで買うのとは異なり、地元のチャリティー、地元企業や出店のオーナーの支援にも繋がる。その洋服を作るためにひとつも新たな資源は使われておらず、新たに裁縫するために誰かが搾取されたりもしていない。店の近くの地元住民が寄付した可能性が高いので、輸送による排気ガスも少なく、あなたが買うことで(中古の服がもともと行くはずであった)埋立地に捨てられることもない。

5. エシカル・ファッションは社会的影響に繋がる

Clara Vuletich氏はあまり大袈裟なことを言わない。エシカル・ファッションは世界を救うというような言い方はスローガンにすぎないのだ。ワン・フォア・ワン・ビジネスモデルのようなキャンペーンの効果には疑いがあるし、フェアトレードのサンダルを買うことよりも国が労働法を変更することの方が効果があるに違いない。しかし、少しは影響があるのでは、という質問には、彼女はYESと答える。

業界関係者でない人にとってはあまりに複雑すぎてよく分かりづらいのは確かだ。ポリエステルでできたドレスのサプライチェーンを辿ろうとすれば、トルコの工場に行き着くかもしれないし、一着のジーンズの歴史を辿ろうとすれば、中国に行きつくかもしれない。そもそもアパレル企業が原料の出所を把握しているかどうかも怪しい。

衣服製造の規模の大きさ自体が、エシカル・ファッションを近寄り難くしている主な理由だろう。加えて消費者のニーズの問題も存在している。

ファッションは個人的なものだ。人々は洋服に様々なものを求める。動物原料を使わないこと、通気性と着心地が良いこと、地元社会にできるだけ影響なく作られていることなど。そして目立ちたい人もいれば、溶け込みたいと考える人もいる。

簡単で楽なものを求める人もいる。しかしファッションをめぐる社会・政治・環境に対する意識が高まるなか、何も考えないままでいるのは逆に難しい。世界を変えることはできないかもしれないが、あなたが消費者として選ぶ選択肢は積重なれば意味を持ってくるのだ。

< Sigamp’s Eye >
編集者解説:エシカルというと「倫理的」だと直訳してしまう日本人は多いが、「環境に配慮したり、持続可能な地球に配慮した背景を持つ」という言い回しにすると、理解しやすいかも知れない。必ずしもオーガニック綿が環境に優しく、化学繊維が環境に悪いというわけではない、というのは我々日本人にとっても重要なポイントになりそうだ。メイドインジャパンの服の素材が必ずしも日本産でないという点も、言われてみればそうである。大切なことは正解を求めることではなくて、自分なりの納得できるポリシーを持って買い物を行う事ではないだろうか。