レポート:それでもハラル相互認証チェックを続ける日本人

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レポート:それでもハラル相互認証チェックを続ける日本人

中国上海浦東空港出発ロビーにある、ハラルレストラン。
中国では、「ハラル対応」は日本よりずっと身近にある。
求める顧客がいるからそれに対応する店がある、
という普通の市場論理だと中国人は笑って話す。
写真:Kosuke Sugano, elapla global Inc.

ハラルの事を調べ始める時に日本人はどんなアクションを取るのか、ふと興味が沸いたのでハラル認証団体の方に質問してみた。

すると、以下のような答えが返ってきた。
「多くの日本人の方が質問するのは、たいてい、どの国と相互認証できるか、という事です。相互認証している国がどこか気になる、という事は何か海外市場に対するプランがあるはずだから、どの国に対して売りたいのですか?と質問しても、答えはあまり戻ってきません。このことを私はいつも不思議に感じています。」

私はこれを聞いて、なんとなく状況がイメージできた。おそらく、ハラルという日本人にとって未知の概念に触れ、それについて調べる時に、以下の事は事前知識としてインプットされているようだ。

・ハラル認証(団体)は世界統一ではない
・各国によってそれぞれ異なるハラル認証団体が存在する
・ある国のあるハラル認証団体と、別の国のハラル認証団体は「相互認証」という形で提携を行っている事がある。

この方々が上記の3つの知識から導き出した検証すべき仮説は、おそらく下記のようなものだろう。
1. 現地(海外)のハラル認証をとるべきなのか、それとも日本でハラル認証をとるべきか。
2. 日本でハラル認証をとるなら、できるだけ多くの相互認証を取得している団体を選ぶべきだ。
3. そして、ハラル認証にかかるコストができるだけ安い団体を選ぶべきだ。

日本ハラル商品の海外販路を開拓する専門家として言わせてもらうと、この仮説は間違ってはいない。間違ってはいないが、正解からはほど遠い。

まず、ハラル認証を取得する目的を自社の中ではっきりさせておく必要がある。中には、「社長にハラルの事を調べろと言われたから」というミッション型の方もいれば、「とりあえず次のブームはハラルだと思うので先に軽く知っておきたい」という情報収集目的の方もいるかも知れないが、ほとんどの方は「ハラル認証を取得して自社の製品の売上を拡大したい、マーケットを広げたい」という目的をもっているはずだ(と信じたい)。売上につながらない単なる時間をかけた調査にお金を払いたい経営者は居ないはずだから。

上記の売上UPが目的だというのであれば、これはもはやハラルという話よりも、海外市場のマーケティングの基本に立ち返らないといけない。例外的に、「日本市場の日本人ムスリムに向けて売りたい」というものがあるが、このマーケットは極めて小さい事から、多くの企業はこれを狙っていないと想定している。(約10-20万人と言われる在日ムスリム人口の中で、日本人ムスリムの割合は低いから。)

海外市場のマーケティングの基本であるならば、以下のような事をまず考慮するべきだ。
・海外に出て売るのか(アウトバウンド)、それとも
日本にいる/住む海外の方を対象にするのか(インバウンド)
・生産は日本で行うのか、対象とする国で現地生産するのか
・ハラル商品の生産は自社生産か、それともOEMか
・対象としたい国のムスリム人口と、ハラル商品に関する信頼度はどのくらいか
・日本から現地への物流と通関に対する規制は難しいものではないか
・現地ローカル物流、代理店の状況
・そもそも現地で日本企業の商品が受け入れられるのか(アンチ日本ではないか)
・あなたの商品価格は現地で受け入れられるのか

一番始めの話に戻って、仮に20か国のハラル認証団体と相互認証している日本のハラル認証団体を見つけたとしよう(それは実際に存在する)。しかし、あなたの商品は上記の海外マーケティングの事前調査の結果、20か国のどの市場でもいまいち参入が難しいことがわかった場合、そもそも「相互認証チェック」を行ったこと自体が無駄になる。

ハラル認証は、水戸黄門の印籠ではない。JISマークやISOのように、品質を保証はしているが、それ自体が売上UPにそのままつながるような夢の道具ではない事を、(ハラル市場に触れてこなかった)日本人である我々は、まずよく認識する必要がある。

ハラル市場とは、未開拓のゴールドラッシュに沸く潜在市場ではなく、もはやムスリム、非ムスリム関係なく世界中の企業がこぞって参入している、ワールドカップクラスの激戦区なのだ。現に、オーストラリアやタイやブラジルといった、ムスリム国ではない国々がハラル市場のトップベンダーとして世界ランキングに君臨している。この激戦区の中に入れば、ハラル認証をとったあなたの企業にとってアドバンテージは1つもなくなり、後発スタートを強いられることになる。

ただし、光も残されている。メイドインジャパンという、ハラル市場後発組においても使える魅力的なブランド力は、使いようによってはあなたの強力な武器となるだろう。

「どの国と相互認証しているか」と日本のハラル認証団体に問い合わせる時間と行動力があるならば、ぜひ下記の質問に変えて問い合わせしてみてほしい。
「ハラル認証をとったら、どんなマーケティング活動を行うべきで、どの位予算が必要か?」

その答えを聞いた時、あなたはきっと、相互認証チェック病から解放され、もとの営業センスあふれる元のあなたに戻っているに違いない。

ハラル認証はゴールではなく、単なるある市場の入り口にすぎない。ただ他と違うのは、そのハラル認証によって開ける市場が、18億人という規模を持っていて、ハラル認証を取得したものしか選択しないか、好んでハラル認証品を選択するという極めて特殊な原理に基づく市場であるだけだ。

最後に格言めいた事を1つ。
・ハラル認証を取得しようか迷っている御社はすでに競合他社より3年進んでいる。
・すでにハラル認証を取得したが売り方に悩んでいる御社はすでに競合他社より10年進んでいる。

先行者メリットがこれほど効いてくる市場も珍しいのではないか、と個人的には思っている。

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