中国国家博物館で開催された Belt and Roadフォーラムのレセプションに臨む UAE首相兼副大統領ドバイ首長国の首長Mohammed bin Rashid Al Maktoum氏、習近平中国国家主席と彭麗媛夫人。
写真:Valery Sharifulin | TASS | Getty Images

UAEが中国と34億ドル(約3,700億円)規模の新たな契約を結び、貿易と投資の関係強化を図ることは驚くには当たらないとWorld Economic Forum Presidentボルゲ・ブレンデ氏は言う。
「中国は現在世界第2位の経済大国であり、アジアは世界のGDPの50%を占めている。UAE等多くの国々が中国を大きな市場機会と捉えている。世界は10年前とは大きく異なっている。多極的で多様な考え方に満ちた世界となっている」

UAEと中国は、中国の一帯一路(中国とアジア、ヨーロッパ、中東と北アフリカの60ヶ国以上を繋ぐ道路・鉄道・輸送ラインを構築する大規模インフラプロジェクト)の一環として週末に34億ドル(約3,700億円)規模の契約を交わした。この合意により両国の貿易額は現在の530億ドル(約5.7兆円)から来年には700億ドル(約7.5兆円)まで伸びると期待される。

UAE副大統領兼首相Sheikh Mohammed bin Rashid Al Maktoum氏も、週末に行われたBelt and Roadフォーラムに参加し、中国の習近平国家主席と会って契約に署名した。

中国はすでにUAEの2番目に大きな貿易相手国であり、UAEは中国の中東輸出の玄関口となっている。

今回新たな契約の内容として、両国は6,000平方フィート(約560平方メートル)の2020ドバイ国際博覧会のための新しいシルクロード鉄道駅開発を含む複数の新たな投資案件を発表した。

UAE・中国3700億円契約:貿易と外交の関係強化

ドバイ2プロジェクトへの中国投資により、 一帯一路政策は伝統的貿易ルートを超える発展へ

中国の一帯一路政策に含まれるドバイの輸送・食品関連プロジェクトへの34億ドル(約3,700億円)の投資はUAE経済への刺激となり、中国・UAEの貿易および外交関係の強化がますます強化されるとアナリストは見ている。
「今回の契約は非常に前向きで、グローバルな物流と中継中心地としてのドバイの役割を強化する内容である。中国がグローバルな輸出成長に果たす役割を鑑みると、中国との繋がりを発展させることはドバイにとって重要だ。ドバイの位置・インフラ・物流と交通についての豊富なノウハウは、中国の発展戦略と目標達成に役立つだろう」とUAE金融業Abu Dhabi Commercial BankのチーフエコノミストMonica Malik氏は話す。

2013年に発表された一帯一路と呼ばれるBRI(The Belt and Road Initiative, BRI:一帯一路構想)は、中国が旧シルクロード沿いの国々に何千億円のインフラ投資をしてヨーロッパと繋げるというものだ。報道によるとこの一年で中国企業はこの計画に参加する125ヶ国の一部のプロジェクトに約156億ドル(約1.7兆円)を投資した。UAEを含む6ヶ国すべてのGCCメンバー国が一帯一路に参加している。

今回の発表は、中国との重要な地域のパートナーとして UAEとドバイの役割を強化するものだと経済学者Nasser Saidi氏は見ている。

副大統領兼ドバイ首長国の首長 Sheikh Mohammed bin Rashid氏の声明によると、先週北京で行われた第二回一帯一路会議で中国企業が2つの契約に署名した。ひとつめは中国の卸売会社Yiwu(義烏?)との契約で、中国商品をドバイ港から世界へ届けるための550万平方メートルの物流センター “Traders Market”をドバイ国際博覧会場付近に建設する。2つ目の契約は、海産物と動物性食品の輸入・加工・包装・輸出を手がける10億ドル(約1,100億円)規模のドバイ製造加工工場“Vegetable Basket”の創設を目指す。

この契約はUAE港湾管理会社DP Worldと中国の3機関、China-Arab Investment Fund Management、Winland Investment Holding、China Co-op Group and Ocean Economic Developmentの間で交わされた。

「この契約で、ドバイは主要な物流の拠点となり、中国の一帯一路構想の中で有利な位置を占めることになる」とSheikh Mohammed氏は話した。

2017年のUAEと中国間の貿易額は533億ドル(約5.8兆円)を超えており、中国はUAE最大の貿易パートナーである。ドバイ首長によると、2020年には700億ドル(約7.6兆円)以上まで増やすことを目指している。建築Chinese State Construction Engineering、IT企業Huawei、China National Offshore Oil Corporationなど、すでに多くの中国企業がUAEで事業を展開しており、 Dubai Tourismによると2018年前半ですでに50万人に及ぶ中国人観光客がドバイを訪れている。

両国は2017年から2018年にかけ相互のアライバルビザ政策を導入し、昨年の周恩来国家主席UAE訪問時には一連の合意を交わした。今回のドバイとの契約は、一帯一路拡張という文脈の中で経済協力がますます強化された結果であると経済学者のNasser Saidi氏は指摘した。

「今回の発表は、中国の地域的パートナーとしてのドバイとUAEの役割をますます強めるものだ。UAEのインフラとコネクティビティ、そしてこれらのプロジェクトから得られた教訓は、同地域と中央アジアの近隣諸国で一帯一路を実施していく上で役立つだろう。これによりUAE企業は中国のグローバル・バリューチェーンに統合され、中国もドバイのグローバル・バリューチェーンに統合される、ということになる」

この関係は中国とUAEのインフラ、輸送、物流企業間の特定のBRIプロジェクトのためのジョイントベンチャーや他の商業協定などを通して強化されるだろうとNasser Saidi氏は付け加えた。

GCCおよび中東全体が今回の投資を活かして、銀行業・観光業・サービス業・クリーンエネルギー・テクノロジーなど様々な部門でビジネスチャンスを狙う中国戦略を立てるよう彼は促している。オックスフォード大学チャイナ・センター所長Rana Mitter教授は、今回の契約は中国がインド洋全体に新たな商業および安全保障コミュニティーを構築し、中東とアフリカに現存する強力な貿易関係を活用する意欲を示していると話した。
「一帯一路は伝統的なシルクロードよりもずっと多くの国々を潜在的に含んでおり、シームレスな東西貿易を構築するという中国の経済政策は見かけよりもはるかに規模が大きい。」

経済活動が低迷するUAEにとっては、今回の契約と一層の貿易協力により、今後数年の経済活動を活発化させ、投資機会を提供し、中国のノウハウと専門知識を学ぶことができるとInstitute of International FinanceのMENA地域チーフエコノミストGarbis Iradian氏は話した。

「中国はその経済力を駆使して重要な国際パートナーと関係を築いている」と Gulf Research Centreのシニア・アドバイザーMustafa Alani氏は付け加えた。

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