ジャカルタの小さな商店で売られている食料品に貼られたインドネシアLPPOM-MUIのハラル認証ラベル。2019年2月15日。写真:ロイター/ Willy Kurniawan
ジャカルタの小さな商店で売られている食料品に貼られたインドネシアLPPOM-MUIのハラル認証ラベル。2019年2月15日。写真:ロイター/ Willy Kurniawan

Salaam Gatewayが入手した資料によると、インドネシア最高ハラル認証機関の高官が、資格更新に関して認証団体からお金を脅し取っていたと告発された。
手紙、供述書やEメールなどから、LPPOM-MUI(食品・医薬品・化粧品検査機関)の Lukmanul Hakim氏がLPPOM取締役の地位を不正に利用した模様。

LPPOM-MUIとは?

LPPOM-MUIはインドネシア最高のイスラム宗教団体で、数十年間にわたり、インドネシア唯一のハラル認証団体であった。
業務の一環として、LPPOM-MUIは海外の認証団体とのハラル相互認証も行っている。
この相互認証は、海外の認証団体がLPPOM-MUIのハラル基準と生産者基準を満たしていれば取得できる。
相互認証を受けた認証団体と商品を認可された企業は、これによりインドネシア市場に参入できる。
この業務は、インドネシア参入を狙う企業へのサービスを提供するインドネシアのハラル認証団体にとって重要な業務である。

MUI職員らが海外団体へ法外な金額を要求

Lukmanul Hakim氏とMUI職員らは、MUIの認定認証団体リストへの残留と引き換えに海外団体へ法外な金額を要求したとされる。

これらの送金は毎年5万ユーロ(約600万円)以上で、支払いがないと認証団体のハラルマークが否認され当該団体はMUI認定海外認証団体のリストから外された模様。

認証団体のひとつは、MUIのリストに再度載せてもらうために12万ユーロ(約1,500万円)も払うよう迫られたという。認証団体と職員のWhatsAppでの会話が証拠として挙げられている。

LPPOM-MUI及び認証団体の国際グループである世界ハラルフード評議会会長の座からのLukmanul Hakim氏の辞任を求める書類の作者は、昨年賄賂の支払いを拒否した後、認定が更新されなかったと言う。MUIの理事長から全ての基準を満たしているという手紙が来たにも関わらず更新されなかった模様。

認証団体関係者は「我々と世界の他のハラル認証団体」が「脅しを受けた」とし、これに関連してLukmanul Hakim氏とMUI職員ではない仲介の男性の名前をあげている。

インドネシア警察、MUI、インドネシアの汚職撲滅委員会、宗教団体などに対し、2017年に恐喝について腐敗の詳細を含む関係書類一式を提出した模様。
Salaam Gatewayはアメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域のハラル認証団体の Lukmanul Hakim氏と彼の関係者による恐喝を申し立てる複数の法定宣言に目を通している。

Lukmanul Hakim氏は、Salaam Gatewayの取材要求に対し沈黙を保っている。

「利害の衝突」

2017年に Lukmanul Hakim氏を恐喝で訴えたハラル認証団体はまた、MUI側の弁護士にIndonesia Halal Watch(IHW)事務局長の座を辞任するよう求めている。

4月15日付のIHW理事長Ikhsan Abdullah氏宛ての、認証団体及びハラル関係者やインドネシア大統領もccに入れた公開書簡で、同ハラル認証団体は「利害の衝突」を理由に、同弁護士兼支持者の辞任を求めている。

同認証団体は4月15日の手紙の中で「あなたはイスラム教の消費者保護のために活動していると思われる組織の事務局長を勤めているという情報を得ました」とIHW理事長Ikhsan Abdullah氏に宛てて書いた。

「今回の件への貴方(Ikhsan Abdullah氏)の関与はIndonesia Halal Watchの立場と明らかに正反対であり、賄賂と腐敗で起訴されている側を弁護する決断に貴方のダブル・スタンダードがはっきり示されている」

Indonesia Halal Watchのトップの座を降りないのであれば、「貴方のダブル・スタンダードをインドネシアのイスラム教徒だけでなく、国際的なハラル・コミュニティーに対しても明らかにする公のキャンペーン」を行うと手紙の作者は警告している。

なぜこの段階でIkhsan Abdullah氏の辞任を求めたのかと言うSalaam Gatewayの質問に対して、認証団体関係者はただ「ハラルに腐敗は無用」とだけ答えた。

今回の手紙の公開を受けて当該認証団体にすぐ他のハラル認証団体から賛同のメッセージが届いたと言う。「応援しているよ、兄弟」とあるWhatsAppのメッセージが送られていた。「(MUI)で我々も同じ問題を経験している」

他にもIkhsan Abdullah氏に関する手紙を見て熱烈な支持が寄せられている。「認証団体はそれを当たり前のことと受け入れ諦めていた。そうでないと(賄賂を)求める国には入れない」とある関係者は話す。「でも、とうとうこの問題に対して立ち上がる・・・それほどの勇気を持った団体は今までなかった」と、彼は手紙を送った人物に関してこう付け加えた。

MUIは「腐敗しやすい」

公的分野の腐敗を監視・報告するNGOであるIndonesia Corruption Watch(ICW)のコーディネーターAdnan Topan Husod氏は、MUIは構造的に腐敗しやすくなっていると言った。

「MUIは透明性もなく、説明責任もない組織です。なぜなら毎年の会計監査も公にされるような会計報告もないから。そのためMUI内部の人間なら誰でも権力を乱用して利益を得ることができる」と話した。

Adnan氏はまた、MUI職員のハラル認証に関する腐敗を申し立てる証言もあったが、ICWはまだ対応できていないと言う。

ICWが検証したひとつの申立にはインドネシアの大手食品会社が関わっており、認証と引き換えにLPPOM-MUI関係者に支払いを強要されたという内容の模様。

「MUIはハラル認証を受けるための料金、追加料金、時間軸などの標準的な手順を公表していない。このような情報はほとんど表に出てこない」

MUIは政府が出資している団体だが、NGOとして運営されている。
このため、インドネシアの汚職撲滅委員会(KPK)の権限外になっている。
ICWによるとその地方の腐敗防止法では、KPKは官僚に関わる事件しか調査できないという。

「MUIに対応できる機関や法執行機関が無い」とAdnan氏は言う。「時にはMUIのulama(ウラマー:イスラム教の知識人)を調査し始めると、職員たちは政府が我々を犯罪者に仕立てていると訴える。政府はイスラムとウラマーを支持していないと非難し始めて、そうすると政治的に難しくなる」

告発者がMUIに対して行動を起こすには警察に届け出るか個人的に行動するしか無いとAdnan氏は言う。
いずれにせよこういった行動には自分や自分のビジネスの名を知られるリスクが伴う。

新たなハラル認証システム

ハラル認証団体によると、2017年にインドネシア警察に提出したというLukmanul Hakim氏に対する告発以前にインドネシアの雑誌TempoがLPPOMのオーストラリアでの認証手続きを非難した2014年2月の事件もあった。

この中で同誌は、MUIはハラル認証を発行する資格を与える代わりに賄賂を求めていたとしている。

MUIはTempoの2014年の記事に対し不正を否定し、Lukmanul Hakim氏はMUIは職員の「渡航費」をカバーするために海外認証団体に費用負担を請求していると説明していた。

当時のMUI議長、Amidhan Shaberah氏は、ハラル認証は無料にするべきだと主張した。

LPPOM-MUIは、今年から新たなシステムが開始されることに伴いインドネシアのハラル認証組織としての役割を終える予定。

2014年11月にインドネシア大統領が署名した第33/2014法の下で、ハラル認証は全てのハラル商品に義務化される。現在インドネシアのハラル認証はオプトイン・プロセスである。

認証業務は宗務省が直接管理する新たな政府機関、BPJPHが行う予定。

4年以上の準備期間を経て、 BPJPHは今年の10月17日から業務を開始する予定。

MUIはFatawa(ファトワー:イスラム法学に基づいて発令される勧告、布告、見解)を伝える役割を引き続き果たし、 LPPOMは政府と協力してハラル監査と認証業務をサポートするインドネシアの多くの研究所のひとつとしての役割を果たしていく予定。


原文:https://reurl.cc/kel4d

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